「国産家具」表示スタートに期待と課題

PK2014062202100130_size0「国産家具」の表示が今春、始まった。国産の原材料に限らないが、日本国内で作られ、シックハウス対策や修理対応など、基準をクリアした家具にマークを付けて販売する。家具の安全性と環境への配慮が高まると期待されるが、課題も残る。

今月上旬、愛知県東浦町のカリモク家具のショールーム。木のいすの背につり下げられた取扱説明書に、「国産家具」という赤いマークが付いている。入り口にはポスターも掲示されていた。「五月からマークを付け始めました。これから小売店に広がっていきます」と山田郁二取締役部長(52)。

国産家具の認定事業を始めたのは、家具メーカーなど約五百社が加入する一般社団法人日本家具産業振興会(東京都)。基準を満たした家具を製造していると認定された事業者が、自社の該当製品に表示する。業界団体が、国産家具の認定事業をするのは初めて。岐阜県、北海道などの全国三十四社が既に認定された。

振興会の丸山郁夫専務理事(54)は「コストを下げるため、一部を海外で作り国内で完成させるメーカーが増えてきた。安い価格帯で海外製の家具も増えた」と背景を説明する。「国内の事業者数、出荷額は縮小傾向。国産の生産技術の高さ、安心感を打ち出し、輸入品との差別化を図りたい」と意気込む。

基準は六項目。「安い家具の使い捨てを防ぎたい」との思いから、製造者名を明記し、修理に対応する体制であることを盛り込んだ。

国は建築基準法で二〇〇三年からシックハウス症候群の原因となる化学物質の一つ、ホルムアルデヒドを発散する建築材料の規制などをしたが、家具については規制していない。振興会は「家具に使用する合板、接着剤などに放散量の少ないものを使う」「厚生労働省が指針値を定めている物質を原材料に含まない塗料を使う」という自主指針を既に定めており、適合することを今回の要件の一つとした。

国産の原材料でなくてもよい。部分品製作からの生産を国内で行うことを要件とする。例えば、いすの肘掛けの木材を切って輸入しても、曲げたり組み立てたりを国内で行えば満たす。「傷つきにくく、家具に好まれる広葉樹は国内に少なく、輸入材の割合が約八割」と丸山さんは説明する。木材の合法性、持続可能性には基準を設ける。国産木材を目指したいという意向はあり、今後の課題だ。カリモク家具が国産の細い広葉樹を使うプロジェクトに取り組むなど、国産木材を活用する動きも芽生えている。

シックハウス問題について長年追及してきた愛知県日進市の一級建築士、大江忍さん(53)は国産の木を使った家造りをする職人グループ「職人がつくる木の家ネット」の代表でもある。大江さんは国産家具認定について「全体的に家具の安全面の配慮が広がることは進歩だが、本来はシックハウス対策は国が規制すべきことではないか」と疑問を呈する。

自然素材の家を建てたいという顧客に「せっかく有害な化学物質を抑えた家を造っても、家具で使うと家まで移ってしまう」と説明し、各家に合わせて化学物質を減らした家具作りも手掛けてきた。「シックハウス症候群の原因は、国産家具の基準で挙げられている物質だけではない」とも言う。また「国産、とうたうのであれば、日本の荒廃する山の現状にも目を向け、近くの山の木で家具を作ることも目指してほしい」と注文を付けた。

(吉田瑠里)

中日新聞Web