バイオマス発電/森林再生、地域活性化を期待

6木くずなどを燃料にする木質バイオマス発電の事業計画が相次いでいる。地球温暖化対策、森林再生、林業復活につながるバイオマス発電の利用をさらに進めていきたい。

採算の見通しが立つ

バイオマス発電は生物由来の燃料を使う。間伐材や建築廃材など木質燃料を利用したものや、生ごみ、家畜の糞尿から発生するバイオガスによるものなど、さまざまな種類がある。その中で、主役として期待されるのが木質のバイオマス発電だ。

二酸化炭素(CO2)を排出する化石燃料による火力発電とは異なり、木質のバイオマス発電は、燃料を燃やすものの、CO2の増減に影響を与えない「カーボンニュートラル」のメリットがある。植物は燃やすとCO2を出すが、成長過程ではCO2を吸収するので、プラスマイナスゼロとなるからだ。

バイオマス発電は火力や原子力と比べると発電能力は低いが、環境への負荷の小ささから、平成14年に地球温暖化対策推進大綱の中で「新エネルギー」として位置付けられた。ただ採算面での課題が解消できず、導入が足踏みしていた。

それが、昨年7月に始まった再生可能エネルギーの固定価格買い取り制度で、バイオマスによる電力も対象となったことで採算の見通しが立つようになった。それを機に、参入する企業が増えた。

資源エネルギー庁が発表した5月末時点の発電設備の導入状況によると、4月と5月の2カ月間で3・8万キロワットが運転を開始し、開始していない設備を含めると38・7万キロワットが認可を受けた。

今月に入って、昭和シェル石油は、160億円を掛けて川崎市にわが国最大規模の木質バイオマス発電所を建設すると発表。発電能力は4万9000キロワットで平成27年12月稼働の予定という。一般家庭約8万3000世帯の電力消費を賄える。

このほか、住友林業が北海道で出力5万キロワットの発電所を計画しており、大手製紙会社「王子ホールディングス」も再来年から、静岡県、宮崎県、北海道で大型のバイオマス発電事業を始める予定だ。

昭和シェルの発電所は、北米や東南アジアから輸入する木質ペレットやパームヤシ殻を燃料とする。他方、住友林業や王子ホールディングスが計画している発電所では、国内の間伐材が使われる。

間伐材の利用は、森林の再生・林業の活性化をも促す。商品価値の高い木材を生産する上で、間伐は不可欠の作業だが、森林の二酸化炭素吸収能力も、間伐を行う方が高まることが明らかになっている。

木質バイオマス発電事業は、過疎地域の多い山村の雇用創出、ひいては地域の活性化につながることが期待される。

雇用確保に向け推進を

最大の課題は、間伐材の安定的な調達だが、それらをクリアして、持続可能な産業となれば、環境や雇用にもたらす影響は小さくない。わが国の国土の約7割は森林だ。バイオマス発電事業を過疎地域を活性化させる産業の一つとして位置付け、推進すべきである。

The Sekai Nippo