徳島県那賀町木沢地区の林業家でつくる木沢林業研究会が、シカの食害対策などのために同町掛盤の山林に植えたミツマタが初めて収穫された。植樹から3年間、食害に遭わなかった上、自生のものより加工しやすい形に育ったことから、会員らは産地化に手応えを感じている。
研究会は、ミツマタがシカに食べられていないことに着目。山肌を守るとともに、紙幣の原料として出荷して新たな収入源にしようと、2013年3月、苗木約800本を植えたのを皮切りに、木沢地区の十数カ所の山林など約25ヘクタールに約3万本を植樹した。
このうち約500本が1・2~2メートルに成長し、今月2日、会員と地域おこし協力隊員の辻蘭子さん(44)ら約10人が収穫。3日には同町小畠のミツマタ加工場で、樹皮をはぎ紙幣の原料となる「白皮」にする作業を行った。
亀井廣吉会長(67)=同町沢谷、林業=は「等間隔で植え雑草処理もしたので、幹がまっすぐに伸び、太さも均一で皮はぎが容易だった」と喜んだ。
3日に作業を視察した独立行政法人国立印刷局四国みつまた調達所(三好市池田町)の山根基専門官は「品質に問題はなさそう。増産してほしい」と期待を寄せた。
白皮の出荷価格は30キロ当たり9万円程度。研究会は産地化を目指して生産・加工体制を整えている。15年度は白皮加工機を導入し、試験加工品も含め白皮約150キロを生産した。近く、加工場敷地内に、研修生らを受け入れる体験交流施設を建設する。
亀井会長は「植樹なら栽培場所を選べる上、質の良いものを安定供給できるなどメリットは多い。今後も栽培面積を増やしていきたい」と話している。
【写真説明】ミツマタを収穫する木沢林業研究会の会員ら=那賀町掛盤