老朽化した支所の建て替えで、邑南町が町内産の木材を9割以上使用した木造建築として工事を進めている。森林資源の活用と間伐などの促進に向けた国の今年度「森林整備加速化・林業再生事業」の補助を受け、完成は今年末の予定。3日、県や県内の建築関係者約60人が工事を見学した。【鈴木健太郎】
同町三日市にある瑞穂支所(旧瑞穂町役場)は鉄筋コンクリート製で、1960年に建設された。約400メートル離れた同町淀原に移転が決まり、1億3398万円をかけ新築することになったが、「森林の豊かな町の間伐材を有効活用し、林業振興のモデルにしよう」と、同支所職員を中心に企画。柱などの構造材や造作材といった大半の木材を、町内の町有林や私有林で間伐したスギで充てた。
その結果、木造平屋建て延べ604平方メートルの建物で使用した木材183立方メートル中、町産材は93%、県産材としては98%にのぼった。特に柱は、スギ材を曲げ加工でアーチ状にして強度を高めるなど工夫。屋根も石州瓦でふくなど「県産」「地産」にこだわった。
佐々木孝義支所長は「県産・町産材で地元の庁舎を建てようという思いが実った。邑南にこれだけ良い木材があるということもアピールしたい」と語る。見学会を主催した「しまね木造塾」代表である足立正智・県建築士会長も「県産・町産の、しかもほとんどスギ材でこれだけの庁舎ができることに驚いた。この流れを公共事業だけにとどめず、民間建築にも広げるようにしたい」と話していた。
<毎日新聞(2010.9.4)>