古い木造住宅に住む高齢者や障害者を、東海、東南海・南海地震などの震災から守ろうと、三重県木材協同組合連合会は、スギの間伐材を活用した屋内設置型「耐震シェルター」を開発した。家屋が倒壊するほどの揺れに襲われても、一室に組み立てられたシェルターに逃げ込めば身を守れるとする。価格は工賃込みで50万円程度で、同連合会は「耐震補強工事は通常、数百万円かかるが、このシェルターなら格段に安く済む」とアピールしている。
県森林・林業経営室が防災対策を強化するために同連合会に開発を提案し、同連合会は県産の間伐材を有効利用できるために応じた。同連合会は、県内市町に利用者が購入補助を受けられるよう働きかける。また、県は、市町が補助する場合は、12万5000円を上限に半額を負担する方針を決めているほか、同連合会は近県からの受注にも応じる方針で、普及が進みそうだ。8月下旬には、四日市市内の民家に受注第1号が設置された。
「耐震シェルター」は、幅2・7メートル、奥行き3・6メートルと六畳間の広さ。高さは、各住宅の天井の高さに合わせて2・1~2・7メートルに調節できる。家屋の中に、一回り小さい「小屋」を造るように、2人の作業員が数日で完成させる。
部品は、プラモデルのような組み立て式になっており、高さ2・7メートルの場合は、厚さ3センチ、幅45センチ、長さ2・7メートルの木材70枚のほか、天井と梁
はり
には、より強度を持たせるため軽量鉄骨16枚も使い、重さは計1・15トン。
3トンの砂袋を3メートル上から天井に落とすほか、重機で地上5メートルにつり上げて落下させる実験でも、強度に目立った変化はなかった。
使う木材は、松阪地区木材協同組合の「あかね材」。スギノアカネトラカミキリの害虫被害で茶色になり、見た目の悪さから、建築業者らの評判がさほど良くない材木。しかし、強度にはほとんど問題ないため、同組合は、通常の木材の6~9割の価格で販売している。
販売の対象は、建築基準法の耐震規定が強化される1981年以前に施工された木造住宅に住み、災害時に素早い避難が難しい65歳以上の高齢者や障害者。
95年1月の阪神大震災では6000人を超える犠牲者のうち、約9割が木造住宅の倒壊によるものだった。このため、県森林・林業経営室の呼びかけに応じて、今年4月から、県建設業協会、県建築士事務所協会、森野捷輔・三重大名誉教授(建築耐震構造学)などが「県産材を使って、自宅内に頑丈で安全な部屋を確保する」という発想で検討し、同連合会が改良を重ねていた。同連合会の伊藤駿司・専務理事(63)は「住宅の2階以上が崩落しても大丈夫」としている。