岐阜県森林研究所(美濃市曽代)は4日、花粉の量が通常の1%以下の県産少花粉ヒノキの挿し木技術を改良し、少ない材料から5倍程度の苗を育成する全国初の技術を開発したと発表した。
少花粉ヒノキは種子ができにくいため、挿し木技術の向上が苗生産の実用化に早いと考えられていた。
開発に使った品種は「益田5号」。茂木靖和主任専門研究員は、母樹からこれまでの技術で育成可能だった15センチ挿し穂で挿し木苗を作り、肥料を与えながら苗を大きくし、その挿し木苗から荒穂を取った。荒穂から5センチの挿し穂に調整し、挿し木を行ったところ、根が出る確率(発根率)は83%と高く、事業可能とされる71%を上回った。
これまでは5センチ挿し穂による挿し木は実用化できないとされていたが、茂木さんは肥料を与えた挿し木苗から挿し穂を取ること、挿し付け後にさし床の上部を密閉し、恒温室で保つ独自手法で克服した。
母樹は郡上市白鳥町にあり、樹齢約50年。本数に限りがあるため、小さい挿し穂で発根率を高める技術が必要だった。
茂木さんは「この苗の植栽を進めることで花粉症対策に貢献できる」と話し、3年後に造林用苗を育成したいとしている。3月までに共同研究した森林総合研究所林木育種センターなどと技術をマニュアル化し、苗の生産者らに情報提供する。
スギの少花粉品種の種苗増殖技術は、既に実用化手法が開発されている。