和歌山県みなべ町のみなべ川森林組合(大串淳組合長)が、みなべ町の里山を活性化させたいと、山林所有者や地域が自分たちで山を手入れして木材を出荷し収入を得る「自伐型林業」を普及させる取り組みを始めた。全国各地で普及指導をしているNPO「土佐の森・救援隊」(高知県)の中嶋健造理事長(52)を招き、メリットや先行事例などについて学ぶ講演会を開催。中嶋理事長は「梅を主に自伐型林業を副業としては」などと提案した。
みなべ川森林組合では森林・林業を再生させ、町内の里山を元気にする方法として自伐型林業に着目し、中嶋理事長を招いた講演会を企画。講演会は町との共催で1月31日に清川公民館で開き、町内外から約70人が訪れた。
中嶋理事長は現在の林業について、山林所有者が自分では施業をせず、森林組合や民間事業体へ委託する「施業委託型林業」が主流であると解説。この手法では施業の集約化を図ることによって施業単位を大規模化し、高性能林業機械を使うことで生産性を重視した施業を行っていると説明した。
しかし、この手法の問題点について、所有と施業を分離したため長年の間に山林所有者や地域住民が森林・林業から遠のいた▽林業イコール木材伐採業となっており、森林経営が消滅▽皆伐して再造林すると赤字になる状況で持続性がない▽規模の大きい作業道などが土砂災害や環境破壊を誘発する―といった点を挙げた。
これに対して、自伐型林業は、森が荒れれば収入に直結するため、森づくりと収入を上げる施業とを両立させる永続的な森林管理・持続可能な林業となる▽低投資で人海戦術型であるため経費が少なく労働対価が多い。現在の材価でも収入になる▽生業としてだけでなく農家や会社員の副業でもできる―などの特徴があると説明した。
実際に、自伐林業に取り組んでいる先進地では、I・Uターン者が増えて地域の活性化につながり年収500万円を超える人も現れていること、林業先進国と言われているドイツやスイスなどではほとんどが自伐林家であり、6割以上が農家と兼業であることなども紹介。「雑木については備長炭の原木であるウバメガシの単価は今のヒノキより良く、もっともっと増やしていくことや、完全に梅の副業として位置付けるなど、いろいろ検討していただければよいと思う」などと呼び掛けた。
みなべ川森林組合と地域住民でつくる「みなべ里山活用研究会」では25日に中嶋理事長を招いて、原木を搬出するための方法を学ぶ講習会を開くことも計画している。
森林組合の松本貢参事は「みなべ川森林組合の役割として、自伐型林業に取り組む人を育てサポートしていければ」と話している。
問い合わせは同森林組合(0739・76・2014)へ。