たくさんの花びらが密集した姿が特徴的で、太平洋戦争の前に京都の著名な造園家が名前をつけたことで知られる「日吉桜」の復活を目指す取り組みが、日吉大社(滋賀県大津市坂本)で始まった。2日には同大社境内で、東京の研究機関から提供を受けた苗木(高さ約4メートル)を植樹した。
日吉桜は山桜の一種で、約30枚もの花びらが集まって一輪の花を構成する。1937年、桜栽培の第一人者だった佐野藤右衛門氏が境内でその特異な姿に驚き、名付けたと伝わる。同大社で自生する固有種で、その後、大阪市の造幣局の桜並木などに移植されたが、現在でもその姿を見られる場所は限られている。同大社には今も境内で数十本の山桜が植わっているが、5年ほど前に調べたところ、日吉桜は残念ながら途絶えてしまっていた。
今回の復活プロジェクトは、大津市の市民団体「日吉大社自然観察倶楽部」が企画し、森林総合研究所多摩森林科学園(東京都八王子市)から苗木の提供を受けた。植樹式に臨んだ同倶楽部代表の辻田良雄さん(61)は「うまく育てて将来は本数を増やすことにつなげたい。日吉桜が、坂本地域の新たな名物になればうれしい」と話した。早ければ、2015年春にも花を咲かせるという。