千葉県南房総市は今年4月を目標に「森林セラピー基地」認定を目指している。市内の森を活用し、「癒やし」をキーワードにした新たな観光商品として開発するのが狙いだ。
現在、実証実験の分析が進められており、リラックス効果が証明されれば、県内初の認定基地となる。
森林セラピーは、森林浴の癒やし効果を科学的に解明し、こころと体の健康づくりに生かす試み。
森林で過ごすことが都市部に比べて、生理的・心理的に明らかに癒やされていると証明されれば、その地域が森林セラピー基地に、散策路は森林セラピーロードに認定される。産官学が連携したNPO法人「森林セラピーソサエティ」(東京都千代田区)が認定している。
千葉県南房総市は昨年1月、同市の森林部を基地に、大房岬(同市富浦町多田良)や花嫁街道(同市和田町花園周辺)など7か所をロード候補地として申請。同ソサエティから委託された独立行政法人「森林総合研究所」(茨城県つくば市)と千葉大学環境健康フィールド科学センター(柏市)が昨年9月、大房岬自然公園のマテバシイやスダジイなどが茂る樹林内の遊歩道と、館山市市街地の国道127号沿いで実証実験を行った。
実験では両場所の条件をそろえ、12人の男子学生が、いずれも平らな道をそれぞれ約15分間、距離にして1キロほどを歩き、心拍や血圧などを測定、数値の比較分析を行っている。同ソサエティは、実験結果に加え、基地となる地域の来訪者の受け入れ態勢や、設定コースにおける遊歩道やトイレといった施設の充実ぶりなどを総合的に判断して認定の可否を決める。
森林セラピー基地とロードは、長野県や東京・奥多摩など主に山間部の観光地を中心に全国で53自治体が認定されている。これまで、千葉県内には認定された場所はなく、南房総市の場合、首都圏からの利便性が高く、海に近い照葉樹森であることや、早春の花畑など、四季を通して滞在できるのが特徴。エコツーリズムも盛んだ。
南房総市観光プロモーション課の本間真理さんは「これまでの観光商品は花や海だったが、認定されれば森も組み合わせ、癒やしや健康を売りにした多彩で魅力的な観光地になる」と期待感を示している。(羽田和政)