間伐材を原料にした糸を大阪府阪南市などの中小企業グループが開発した。
「木糸もくいと」と名付けられた新素材は、林野庁からも高く評価され、間伐材の有効活用や新しい天然資源の可能性に期待が高まる。
開発したのは、阪南市の織布会社や紡績会社、近隣市の製紙会社や撚糸ねんし会社など計11社で作る「はんなん和紙の布工房協議会」。
協議会会長の阿部正登さん(55)が約3年前、ある会合で林野庁職員らと間伐材の活用が議論になった際、「布を作れば」と提案したことがきっかけになった。
経営する織布会社で和紙を使った布の開発に取り組んできた阿部さんは、地元企業の仲間らに声をかけ、昨年度から「木糸プロジェクト」に着手した。
だが、間伐したスギやヒノキの針葉樹は繊維が短くて頑丈さに欠け、織機で布にしようとしてもプツプツと切れた。試行錯誤の末、名古屋工業大の協力を得て、間伐材をチップにして溶解し、テープ状(5ミリ幅)の紙をつくって綿とより合わせる手法を考案。約1年かけ、木糸が出来上がった。
木糸の原料は府内の間伐材で、同協議会の各社が手分けして布まで加工。カバンやハンカチなどを作っており、来年2月頃からは一般販売する予定だ。衣服にも活用できるよう動きやすさと毎日洗える強度を備えた素材の開発に取り組んでおり、最終目標は薄く柔らかい赤ちゃん用品という。
今年10月には林野庁の間伐・間伐材利用コンクールで最優秀賞を受賞した。阿部さんは「日本は国土の7割が森林。将来は全国各地の間伐材を木糸から作った幅広い製品に変えていきたい」と話している。
新しい需要喚起
大阪府によると、府内の森林面積は約5万6000ヘクタールで、うち年間約1000ヘクタールの間伐が必要。しかし、2012年度に府内で発生した間伐材1万9476立方メートル中、建築資材やペレットなど製品として使われたのは32%の6210立方メートルにとどまる。林野庁は国内で毎年、未利用の間伐材などが約2000万立方メートル発生していると推計している。
木糸の開発について、同庁整備課は「間伐材を使った製品の新しい需要を喚起できる。布製品の輸入原料を代替する国内天然資源という意味でも潜在能力が非常に高い」としている。