西日本最大級といわれる滋賀県長浜市余呉町小原にあるトチノキの巨木林を、保全する活動が進んでいる。滋賀県の要請を受け、6月には地元の森林所有者を中心にした「高時川源流の森と文化を継承する会」が結成され、10月には県や長浜市と保全協定を結んだ。今後、会員がパトロールや歩道整備をするとともに、廃れてしまった山村文化の継承活動も行う。
小原地区は、国の丹生ダム建設計画が持ち上がり、1996年までに全住民が移転した。周囲の山林は高時川の源流域で、地元ではトチノキの巨木が多くあることが知られていた。県は、2010年に高島市朽木でトチノキ巨木の伐採問題が起こったのを教訓に、小原での保全団体結成と支援を働き掛けていた。同会は、森林所有者13人を含む30代から70代の15人が会員になっている。
一般的に巨木は直径が3メートル以上のものを指す。航空写真と聞き取りで巨木が1000ヘクタールの範囲に200本以上あることが判明、さらに今年3月からは会員が現地調査を実施。中には推定樹齢500年で直径7・8メートルのものもあったという。これまでに120本の巨木を確認し、80本近くに太さなどを示したプレートを付けた。今後も調査を進め来年度以降には一般の人が入山できる催しを検討する。
カエデの皮を使った伝統工芸「小原かご」の制作で「森の名手・名人」に選ばれた太々野功会長(77)は「巨木保護以外にも、この地域で発展した薬草の作り方や、くぎ・針金を使わない小屋の建て方なども伝えていきたい」と話す。
県自然環境保全課は「太さが3メートルを超えるトチノキの巨木が一定の範囲で200本以上あるのは珍しく、西日本最大級といっていい。保全を進めたい」としている。