富士市吉原商店街の玩具店「おもちゃのキムラ」が、富士山の形をした木製の乳児用の玩具「ふじさんがらがら」を発売した。店長の木村光亮(みつあき)さん(38)らが、子育ての経験を生かして開発。木のおもちゃにこだわりを持っており、世界文化遺産への登録を機に「全国の子どもたちに幼いころから富士山に親しんでもらいたい」と願いを込める。
富士山麓のヒノキで作った一辺六・五センチの丸みを帯びた三角形。頭の部分は色の濃い木材を組み合わせ、積雪をイメージした。アズキを中に入れ、振ると優しい音が出るようにした。
デザインは、全国レベルのデザインコンテストで受賞経験豊富な富士市在住の鈴木雄一郎さん(40)、木の加工は富士宮市に工房を構える中矢嘉貴(よしたか)さん(41)に頼んだ。「モチーフが地元の富士山なら、材料も作る人も地元にこだわった」と木村さん。三人とも子育て中で、その経験を基に大きさなどの細部を詰めた。
千八百九十円と少し高めの値段をつけたが、七月中旬の発売からわずか一カ月で数十個が売れる人気ぶり。「赤ちゃんの歯がはえてくる時期でも安心して与えられる」(木村さん)と、木製の良さが受け入れられているようで、すでに在庫もわずか。追加発注分が十月に入る予定だ。
おもちゃのキムラにはほかにも国内外の木のおもちゃが並ぶ。しかし、木村さんが店を継いだ十三年前はゲームソフトやキャラクター製品が並ぶ、どこにでもある玩具店だった。転機は二年前、長女(4つ)と長男(2つ)が大手メーカーの玩具をよそに木のおもちゃで遊び続けているのに気付いた。「シンプルさを追い求めたら木にゆきついた」。市内に進出する大型店と差別化する必要もあり、木のおもちゃを仕入れるようになったという。
木のおもちゃには追い風も吹いている。自治体が誕生祝い品として贈る取り組みが数年前から、東京都新宿区を皮切りに全国に広がった。旗振り役の「日本グッド・トイ委員会」(東京)は、玩具を通して自然に親しめる教育効果や、普及率の低い国産木材への関心が高まることを期待している。
今のところ、木村さんの店に並ぶ木のおもちゃは欧州製が多い。でも、木村さんは「富士山の世界文化遺産登録のチャンスを生かせば、商店街からだって世界に通用する玩具が作れる」と信じている。「富士山をモチーフにした木のおもちゃ」というコンセプトで、第二弾以降の新商品を開発していく考えだ。
問い合わせは、おもちゃのキムラ=電0545(52)1382=へ。