3000メートル級の日本アルプスのような高山では、亜高山帯の高木が生育できなくなる限界高度を「森林限界」と呼ぶ。北アルプスでは2400メートル前後、南アルプスでは2600メートル前後で、それ以上の高山帯ではハイマツのように地をはうような低木しか育たない。
西穂高岳(2909メートル)は標高2385メートルの西穂山荘周辺が森林限界に当たる。山荘から少し登ると高木が消え、ハイマツに覆われた丸山(2452メートル)に出る。ここは視界が開け、絶好の展望台だ。行く手に西穂の頂上部や前穂高岳(3090メートル)が望め、左手の飛騨側には笠ケ岳(2897メートル)、右手の信州側には梓川が流れる上高地を見下ろせる。
「おお、素晴らしい!」。丸山周辺の眺めに男女のグループが声を上げ、写真を撮り始めた。西穂の上の青空には筋状の雲が走り、山の緑とのコントラストが鮮やかだ。
久々にのぞいた夏山らしい光景に、尾根を歩く登山者の多くが満足そうな表情を浮かべていた。【武田博仁】