モルディブ:温暖化との闘い、諦めない 国土水没の危機、環境相来日

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インド洋に浮かぶモルディブ。サンゴ礁に囲まれた美しい島々が首飾り状に連なる漁業と観光中心の国だが、このまま地球温暖化が進んで海面が1メートル上昇すれば国土の80%が水没すると言われる。このほど来日したマリヤム・シャキーラ環境・エネルギー相は毎日新聞のインタビューに応じ、危機回避に日本政府の協力を訴えた。

−−温暖化の影響でどのような被害が出ていますか。

◆海岸線の浸食は差し迫った問題だ。暴風雨のたびに高潮に見舞われ、ひどく浸食された島もあるが、対策が追いついていない。地下水が海水と混ざって飲めなくなるなど水の汚染も深刻だ。また、サンゴ礁の死滅は観光への打撃にとどまらず、生活や文化、伝統にも影響する。

●対策予算足りない

−−対策費に年間どのぐらいかかっているのですか?

◆国家予算の約10%を温暖化対策に使っているが、不十分だ。水質汚染対策では194の有人島のうち、下水設備のある島は29カ所、飲み水を作る施設があるのは5カ所だけだ。全島に整備したいが、予算は足りない。小さな島国は日本など他国の援助に頼らざるを得ないのが現実だ。

−−水没に備え、国民の移住先を海外に購入する計画があると聞きました。

◆そんな話はない。海面上昇で沈むのは、たとえばニューヨークかもしれない。温暖化は世界共通の問題で、どこかへ引っ越せば避けられるものではない。そうなる前に各国が協力して温室効果ガス削減や防災対策に取り組めば、きっと危機は抜け出せる。良い例が2004年のスマトラ沖大地震後の津波だ。日本の支援で堤防が建設され、首都マレは守られた。よそへ引っ越せば、私たちはアイデンティティーを失う。決して温暖化との闘いを諦めない。

−−先進国や中国、インドなど温室効果ガスの主要排出国に求めることは?

◆科学に基づいた議論をしようと訴えたい。地球全体の二酸化炭素(CO2)濃度がこのまま400ppm(ppmは100万分の1)を超えれば、気温上昇を産業革命前の「2度未満」に抑えるという国際合意を達成することはできない。日本はCO2削減だけでなく、再生可能エネルギーを増やす意思を示している。後発の国々が今後持続的な形で成長するためにも、日本にはお手本になってほしい。

●日本の投資を期待

−−モルディブは、再生可能エネルギー事業などに日本から資金や技術を受ける代わりに、CO2削減分を日本の削減分としてカウントする「2国間クレジット制度」に署名しました。

◆強い絆が結ばれ、とてもうれしい。日本の企業がモルディブに多くの投資をしてくれるのではと期待している。【聞き手・阿部周一】

毎日JP