鳥取大学発ベンチャー(VB)のハイパーブレイン(鳥取県米子市、加藤豊実社長)は県内の土木工事会社と組み、ヒノキなどの間伐材を活用した芳香製品を商品化する。まずペット用消臭剤を今秋に発売する。間伐材のうち枝や葉は建材に使えないため放置されるケースが多いが、日本人に身近な香りを持つことに着目。芳香製品原料として付加価値を高め、過疎地域の林業再生にも一役買う。
精油を抽出する際に発生する蒸留水を有効利用する(容器は試作品)
ペット用消臭剤は赤松産業(日野町、赤松康近社長)に製造を委託した。同社は廃校となった日南町内の小学校に約800万円を投じて小型プラントを設置。このほど試験稼働を開始し、日南町産ヒノキの間伐材や葉などを40~90分間蒸して芳香成分を精油(アロマ)として抽出している。間伐材5~7キログラム当たり50~100ミリリットルの精油を抽出できるという。
精油を抽出する際に5~10リットルもの蒸留水が発生する。通常は廃棄するが、これをペット用消臭剤に活用する。ハイパーブレインの加藤社長は「香りが十分残っており、品質面でも問題がない。化学合成された薬品類を一切使っておらず、ペットが口にした場合の安全性も期待できる」と話す。
蒸留水を容器に入れて鳥取大が開発したリング状の抗菌セラミックを加え、スプレーとして吹き付けて使う。同大農学部の協力を得て4月から9月にかけて安全性や抗菌力を検証し、問題がなければ200、350、500ミリリットルの3種類の容量で商品化する。ホームセンターや動物病院などのルートで1個2000~4000円前後で販売、3年後をめどに3億円の売り上げを目指す。
抽出プラントは赤松産業が3基まで増設する方針。現在プラントを設置している廃校では手狭なため、需要動向をみながら、町内での工場の建設も視野に入れる。一方で精油はヒノキだけでなくスギからも抽出を進めており、将来の商品化を想定して鳥取大医学部と効果を探っている。
日南町によると、同町内の山林では年間8万~9万立方メートルの間伐材が発生している。このうち6万5000立方メートルは合板などの建材として使われるが、枝や葉はそうした用途に利用できないため付加価値が低く、2万立方メートル前後が搬出費用が賄えずに山林に放置されているという。
このため、両社は消臭剤の原料として新たな需要をつくり、間伐材の利用を促進する。軌道に乗れば、赤松産業は利益の一部を積み立て、植林費用に充てる地元のファンドに寄付するといった林業支援策を検討する。
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