シイタケ原木出荷停止 県北林業に打撃「過疎進む」

2012.1.5 茨木新聞
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福島第1原発事故の影響が、シイタケ栽培用の原木を供給する県北地域の林業関係者にも及んでいる。原木から暫定基準値(1キログラム当たり150ベクレル)を超える放射性セシウムが検出され、出荷ができないためだ。計画していた伐採もできず、山には伐採途中の木々が放置されたまま。関係者は「産業が成り立たず過疎が進んでしまう」と頭を抱えている。

「やっと軌道に乗ってきたところだったのに、時間が止まってしまった」

日立市最北端の山合い、同市十王町高原。奥日立キノコ原木生産組合の須田哲也組合長(70)は表情を曇らせる。

同組合は、組合員21人が所有する計40ヘクタールの山林を有効活用。ナラやクヌギなどの山林を伐採し、シイタケ生産者らに原木を供給するほか、家庭栽培用に菌を打ち込んだ「ほだ木」を県内外のホームセンターや直売所などに出荷している。

年間約4千本もの原木を生産。須田組合長は「山林を有効に使い付加価値を高めたかった」と組合設立の理由を話す。高齢化が進む県北地域の発展につなげたい気持ちもあった。

林業は未経験だったメンバーが伐採から植菌、出荷まで主に3人でこなす。メンバーの一人、小貫富康さん(69)は「チェーンソーに触ったこともない状態で一から勉強した」と振り返る。組合設立から昨年で5年目となり、徐々に販路は拡大。事業は安定していた。

そんな最中に起きた昨年3月の原発事故。事故直後から、返品が続いたという。林野庁は同10月、原木の放射性セシウムの暫定基準値を設定し、基準を下回れば出荷できるとした。組合も、原木とほだ木を自主検査したがセシウムは基準値超え。同9月ごろから店頭に並んでいたものもあり、約1300本を回収した。

山林近くには値札がついたままの原木やほだ木が一時保管されている。ほだ木からはシイタケが育っており、須田組合長は「簡単に処分もできず、涙が出る」と漏らす。通常ならば12月〜1月ごろが伐採の最盛期だが、山では伐採作業が止まったままだ。

東京電力への損害賠償請求も頭を悩ませる。「山には何千本ものほだ木が寝かせてある。どこまで補償されるのか。見当がつかない」(須田組合長)。

今年4月には、食品に含まれる放射性セシウムの新たな基準値が1キログラム当たり100ベクレルに厳格化される。原木の基準も変わる可能性もある。「原木シイタケの生産農家にも打撃は大きいと思う。原木を含め、かなり危機的な状況になる」とみる。

須田組合長は「山を生かさないと、県北中山間地域の産業は成り立たず、このままでは過疎化が進んでしまう」と懸念している。


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