トヨタ、自動車製造で培った生産管理手法で林業に

2011.09.21 日経エコロジーサポート

セイホクが森林組合などと国産材100%合板を量産し始めた。トヨタは自動車製造で培った生産管理手法で林業に乗り出す。

今年6月に操業した森の合板協同組合
 岐阜県東部・JR中津川駅から車で30分ほどの山間に今年4月、森の合板協同組合(岐阜県中津川市)の工場が稼働した。周辺の山から運び込んだ間伐材は、2~4mに切断して、外皮をむいて単板にする。これを積層して接着したのが合板だ。

 投資額は約60億円。46人が昼夜2交代で働き、フル操業で月産約4800m3の合板を生産する。必要な原木は約8000m3になり、岐阜県内の木材生産の約3分の1に達する。

 同組合は合板最大手のセイホクグループ現地法人5社と岐阜県森林組合連合会、岐阜県森林施業協会によって構成する。セイホクは、これまで石巻工場など、海沿いに工場を設置してきた。国内の合板生産に使う原木は、かつて南洋材、1990年代以降、北洋材が主流だったため、海沿いが便利だった。

 森の合板協同組合は、国内で初めて国産材100%で合板を作る。それゆえ、森に隣接する。山間に位置する合板工場は国内初になる。

 ロシアが原木輸出時の関税を引き上げたことで北洋材が値上がりしている一方、国内では戦後植えた植林木が伐採期を迎えている。自ずと国産材に目が向き始めた。ただ、「径の小さい国産材で合板を作るには、新たな製造機械を開発し、単板の品質検査など、外材以上のきめ細かい生産管理が必要になる。新型機械と製造技術の双方がそろったことで量産できた」と、齋藤強・専務理事は話す。

 「今後の課題は、原木を安定的に調達すること」(齋藤専務理事)。合板の原木は、直径14~15cmの「B材」。それ以上の「A材」は建材に、それ以下の「C材」は製紙や燃料のチップになる。これまで岐阜県内ではB材やC材の使い道がなく、間伐しても森に放置していた。同組合は、森林組合と協力して、間伐したB材を山から運び出すように呼びかけた。その結果、県内で搬出したB材の量は昨年の2~3倍に急増した。

 同組合のスローガンは「山と森と木と自然に感謝して」。海沿いを離れ森に乗り出したことで、森と一体となった経営を実現しつつある。