ムダなエネルギーを削減 ビル・建築物の環境対策

2011年2月15日

 110218b_01生活の多様化によって、わが国のエネルギー消費量は増加している。特に、民生部門での増加が目立つ。地球環境を守るためには化石燃料の使用量を減らすことが第一前提で、それを実現する技術は次々と開発されている。省エネルギー化、二酸化炭素(CO2)排出量の削減を支える技術を導入し、早急な対策が求められている。
条件を考慮した空調設計で省エネ
 経済産業省の「エネルギー白書2010」では、産業界のエネルギー消費量は1973年度と比較すると2008年度には0.9倍と減少している。電子機器の普及をはじめ、さまざまな分野でエネルギーを使用する場面は増えている一方で消費量が減少しているのは、それぞれの機器のエネルギー効率が向上したことに加え、産業界が積極的に省エネ設備を導入してきた結果といえる。
 しかし、民生部門では同2.5倍と大きく増加している。エネルギー消費量全体の割合は、73年には産業部門が64.5%、民生部門が18.7%と産業部門が突出していたが、08年には産業部門が42.6%、民生部門が33.8%と割合の差が縮まり、民生部門の改善が急がれている。
 ビル・建築物のエネルギー消費量で大きな割合を占めるのが「照明」と「空調」だ。この2分野への対策が決め手となる。
 経産省は30年に向けて、ビル・建築物の一次エネルギー消費量をゼロまたはおおむねゼロとする「ネット・ゼロ・エネルギー・ビル(ZEB)」を提唱。この中で、照明と空調の省エネ性能の向上を対策の一つとしている。
 照明分野では発光ダイオード(LED)照明の導入。LED照明は消費電力が少なく、寿命も長い。イニシャルコストは高いが、ランニングコストを考えると大きなコスト削減につながる。空調分野は高効率空調熱源機の導入が挙げられている。
 ランニングコストの削減においては、ムダなエネルギーを使わない空調設計が重要となる。ビル・建築物ごとの使い方や利用時間、窓の位置などの条件を考慮し、システムを効率的に運用するのだ。日本空調衛生工事業協会の資料では、建築物のライフサイクルにおけるCO2排出量の約7割を「運用」が占める。この部分を改善できれば、大きな効果が発揮できる。
 また省エネ・CO2排出量の削減だけでなくセキュリティーの面でもシステムの役割は大きい。フロアからの退出後には電話の電源を自動的に切りエネルギーを削減し、不法侵入者を感知したらフロアの照明がつくなど、省エネとセキュリティーの両面を併せ持ったシステムもある。各メーカーは既存施設への導入にも対応し、蓄積された経験・ノウハウによって環境設計を行う。

日刊工業新聞


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