2011年5月17日
杉産地で知られる高知県嶺北地方の本山町で、間伐ボランティアグループ「吉野川森林救援隊」が立ち上がった。経験はまだ少ないが、町の林業を少しでも元気にしたいと、まずは吉野川の景観を遮っている国道439号沿いの杉林の伐採に汗を流している。
救援隊員は約20人で、町で仕事づくりを目指して活動している「本山町地域おこし協力隊」のメンバーが中心だ。協力隊は全国から公募で集まって農林業などを実践し、起業や地域が元気になる産業づくりを模索している。
救援隊代表の八尋哲哉さん(53)は福岡県出身。東京の出版社で住宅雑誌の編集に携わり、建築家や林業関係者と交わるうちに林業に関心を持った。地域おこし協力隊員に応募して町に来て「ものすごい山にびっくりして、山仕事をするしかない」と思ったという。
だが林業には大きな機械と何年もの研修が必要とのイメージがあり、どこから手を付けてよいのか分からなかった。そんな時、NPO法人「土佐の森・救援隊」(いの町)の間伐ボランティア活動を見学。「僕たち素人でもここまでさせてもらえる。ノウハウや技術を学んで本山町に還元したい」と考えた。
協力隊の仲間に声をかけ、同NPO主催の自伐林家養成塾に6人で参加した。チェーンソーや重機の使い方、木の搬出方法を学び、今年3月、吉野川森林救援隊を結成した。
土佐町出身で、三重県のIT企業勤務を経て地域おこし協力隊に入った時久恵さん(27)も、救援隊メンバーの一人だ。今では重機も扱えるようになった。「ものすごく力がいると思っていたけど、汗もかいて体も丈夫になるというか、こんなに林業が好きになると思わなかった」と、重いチェーンソーを使っての間伐に参加している。
広島県出身で東京や大阪で飲食関連の仕事をしていた地域おこし協力隊員・大下健一さん(34)は、救援隊員ではないが、山主と交渉にあたり、切った木を搬出する作業も手伝う。「1人で押しても動かないのが何人かで同じ方向に力を合わせると動く。息が合ってくると楽しい」と話す。
本山町も林業不振で実際に山に入る人は減り、後継者難が深刻だ。八尋さんは「我々が山に入っているのを地元の人が『うれしい』と言ってくれる。林業で仕事できる人が少しでも増えるよう、山主さんに声を掛け、活動の場を広げていきたい」と意気込んでいる。(前田智) asahi.com
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