2011年1月16日
◇薪ブランド化し森再生--小田和人さん(44)
県が地域に眠る農林生物資源を発掘し、販路拡大を応援する「三重のバイオトレジャー」に、鳥羽市の林業会社、ODAWA(おだわ)創林(そうりん)が提案した「伊勢志摩産ウバメガシ薪(まき)」が認定された。社長の小田和人さん(44)は「たくさんのウバメガシが自生している伊勢志摩は間伐をしないため、森が荒れつつある。伐採したウバメガシで作った『薪』をブランド化し、豊かな自然環境の保全、再生につなげたい」と意欲を燃やしている。【林一茂】
ウバメガシはブナ科の常緑広葉樹で、良質の炭として知られる備長炭の原料だ。西日本や四国、九州の沿岸部の森林に多く見られる。高木もあるが、通常は5、6メートルの低木が多い。伊勢志摩地方では海に面した丘陵地に生育し、ウバメガシから作った薪は材質密度が高いため、火がすぐにつき、火持ちも優れているという。
伊勢志摩では以前、炭焼き用として大量に伐採されてきた。木の成長を見ながら伐採する▽伐採後の成長のためオノを使用する--などが守られ、間伐による健全な森林が保たれてきた。
ところが、炭需要の減少から業者が激減し、今では7戸が細々と焼いているだけだ。このため、間伐などが行われている森林は限られ、広範な地域でウバメガシの管理が放棄されている。人の手が入らなくなった森は、ウバメガシが密集した結果、下草が生えずに森は荒れる一方だという。
小田さんは「適切な手入れをすれば、健全な森林が保持できる。それによって保水力が拡大し、がけ崩れなどの災害防止やイノシシやサルなどの獣害抑止、さらに栄養分をいっぱい含んだ水が海に注ぎ、海が育つ」と強調する。「荒れた山を『里山』に戻すことが漁業の振興にも役立つ」と説く。
1年前からウバメガシの薪作りに励んでおり、既に70~80トンを確保した。近年人気を集める薪ストーブ用に販売するほか、今冬から志摩市内の料理旅館に納入を始めた。薪事業を軌道に乗せたら、伊勢志摩産のウバメガシを焼いた備長炭事業にも拡大したいと考えている。小田さんは「ゆくゆくは豊かに育った森からくみ上げた水を海外に輸出できるようにしたい」と夢を膨らませている。
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◇メモ
ODAWA創林は2年前に創業。従業員は10人。森林組合の間伐・植林作業や危険木の伐採、下草刈りなどを請け負う。小田和人社長が以前、備長炭を使った製品開発に取り組んだ経験から、ウバメガシによる薪事業に乗り出した。