2011年1月9日
高知県いの町のNPO法人が、同町周辺の山沿いの集落のお年寄りに薪(まき)を無料で宅配する社会実験を始めた。この地域には今も薪で沸かす風呂を使う家が点在するが、高齢化が進み、薪の確保が課題になっている。間伐材を利用することで森林保全と高齢者福祉を結びつけ、将来的にビジネス化するのが狙いだ。
先月上旬、NPO法人「土佐の森・救援隊」の理事の田植光男さん(63)は、軽トラックに薪を満載し、愛媛県境に近い仁淀川町の山あいの集落に向かった。待っているのは、娘と孫の女性3人で暮らす西森信子さん(83)。西森さん宅は車道から細い急坂の路地を数十メートル上がったところにある。
西森さんはかつて裏山で薪を取っていたが、高齢で山に入ることが難しくなり、最近は森林組合に頼んで、切ってもらった木を薪にして蓄えていた。しかし残りはわずか。「本当にありがたい」と田植さんに頭を下げた。
いの町の中心から狭い山道を車で数十分。斜面にへばり付くように家が点在する同町成山地区で一人暮らしをする近藤和子さん(78)も、薪の宅配を受けている。近藤さんは「自分の手でこんなに薪を作るのは大変。こればぁあれば自由にたける」と喜んだ。
社会実験は2月までの3カ月間。高知県と四国労働金庫(高松市)の助成を受け、いの町と、隣接する仁淀川町、本山町の計14世帯に毎週1世帯約100キロずつを無償で宅配する。訪問時に話し相手にもなり、生活物資を買って届ける「御用聞き」の役割も果たすのが目標だ。
NPO法人の理事、四宮(しのみや)成晴さん(49)は「継続できる仕組みをつくり、社会事業として成り立たせたい」と話す。(前田智)
<asahi.com 2011.01.09.>