■1トンが6000円「町を元気に」
杉などの間伐材を販売した資金などをもとに地域通貨「杉小判」を流通させ、荒れた山林の再整備と、地元商店街の活性化につなげる「木の宿場
やど
社会実験」が16日、鳥取県智頭町で始まった。町民有志やNPO法人などでつくる実行委員会が企画、約1か月続け、経済効果などがあれば来年度以降、本格導入する。町民からは「売れないため山に放置されていた間伐材が有効活用されるし、地域も元気になる」と期待の声があがっている。
(高田寛、家城健太)
一時保管所に間伐材を運び込む町民(智頭町の智頭テクノパークで)
地域通貨「杉小判」(見本、智頭町提供)
事前登録した森林所有者が間伐材を町内3か所の一時保管所に運搬すると、実行委から1トンあたり6000円分の杉小判をもらえる。杉小判は紙製で、額面は1000円相当を意味する「壱両」。町内の食料品店や書店など登録済みの26店で使用できる。現金との併用は不可。商店主は杉小判にレシートを添えて事務局に提出すれば、現金と交換できる。
財源は、間伐材の売上金と補助金。事務局は県外の業者に1トン3000円で販売し、差額は町とNPO法人賀露おやじの会(鳥取市)の補助金でまかなう。町は今年度予算に補助金30万円を計上。間伐材は木材チップに活用されるという。
この日、町内で式典があり、林業関係者ら約40人が出席。寺谷誠一郎町長が「山が元気になって町も元気になるよう頑張りましょう」とあいさつ。その後、軽トラック23台分の間伐材が続々と運び込まれた。
仲間6人で0・8トン分を運搬し、5000円分の杉小判に交換した同町西谷、声高等さん(60)は「一緒に運んで汗を流した仲間と杉小判で一杯飲みに行きたい。山の手入れにもなるし、町民同士のコミュニケーションも広がる」、同町智頭で時計・宝飾・眼鏡店を営む大久保善夫さん(67)は「商店も町も元気になれば、ありがたい」と笑顔。実行委員長の綾木章太郎さん(59)は「木材を出荷する人、参加する商店を増やし、山と商店をつなげて町全体を明るくしたい」と話していた。
実行委によると、この事業は、町の過疎化と林業の不振を受けて実施。町面積の9割が森林で杉の産地として知られるが、近年は安い外国産材の流通などで低迷。間伐材も全盛期の1980年頃に比べて5~6分の1に値下がりし、労力や経費に見合う利益が得られず、伐採後も放置されていた。このため、町民有志が2009年度に町に提案し、実行委をつくって準備を進めていた。