山間部を中心に、集落が共同で森林の管理を担う「木材生産組合」の設立が県内で相次いでいる。木材価格の下落が続いて林業の従事者が激減するなか、集落単位の組織を立ち上げ、荒れた山林の復興と間伐材の利用拡大を目指す仕組みだ。(足立耕作)
福井市南西俣町の山林で7日午前9時、「南西俣木材生産組合」が間伐材を搬出する作業道の整備を始めた。同組合は県が進める「集落林業」の認定第1号で、8月1日に設立された。
同組合は地区で山林を所有する30戸で構成する。小林儀博組合長(59)によると、組合員の多くが農業や会社勤めを収入源とし、ここ数十年は木を切り出していない。小林組合長は「今は、個人が山林整備をするのは厳しい状況。集落が協力して子や孫に山を残していきたい」と話す。
県は3月、森林再生に向けた今後10年間の事業計画を策定した。その中で、林業従事者の確保や山林に放置されている間伐材の有効活用の対策として、地域が協力して山林の管理と木材生産にあたる「集落林業」を主な柱に掲げている。
山林所有者が集落ごとに木材生産組合を作り、間伐や伐採など森林整備の事業計画を県に申請して「集落林業」の認定を受ければ、設立支援として145万円の補助金が交付される。今年度の新規事業として計1450万円を予算化した。「南西俣木材生産組合」に続いて勝山市や池田町でも組合が設立され、10年後に計150組合を目指している。
農林水産省の統計によると、1立方メートルあたりのスギ中丸太の価格は、1980年の3万8700円をピークに、2008年に1万1800円まで下落した。一方、伐採や搬出の賃金が高騰し、販売しても赤字の場合も多く、林業従事者は減り続けている。
県産材活用課によると、山林を保有する県内2万6千戸のうち、山林整備をしているのは約半数という。間伐が必要なはずの人工林の半分が間伐されておらず、荒れた山林の整備が課題という。
近年、県内や近隣府県に大規模な木材加工工場が次々と建設されており、住宅向けの合板や集成材の原料となる間伐材の需要が高まっている。ただ、県内の間伐材の利用率は3割と低く、7割が山に放置されている状態だ。同課の担当者は「集落全体が作業道などの整備に取り組むことで低コスト化を図る。林業従事者を増やし、県産材の生産拡大を目指したい」と話す。
<朝日新聞(2010.10.8)>