「森を守る」女性が起業 稼げる林業 仕組み目指し【石川】

PK2017010402100068_size0金沢 木工品製作や催し企画

金沢市の三十代女性がオリジナルの木工品を作るとともに、森林を知ってもらうイベントを企画する会社を一人で始めた。日本は森林大国ながら木材の自給率は三割にとどまる。伐採や搬出のコストを考えると「木を出せば出すほど赤字」と嘆く林業関係者がいる中、木の価値を高めて利用を促す。(押川恵理子)

昨年五月に「Rootive(ルーティブ)」(金沢市)を設立した加藤麻美さん(36)は、主に石川県産のスギ、能登ヒバを使い、木のぬくもりが伝わる商品を受注生産している。

同県能登町宇出津で育ち、幼いころから山が遊び場だった。鳥や虫、川のせせらぎに癒やされてきた。二十代から里山保全のボランティアを始め、「緑豊かに見える山が病気の状態」と知った。間伐されなくなった森林は日光が下まで届かず、生態系が乱れていた。

「このままでは土砂崩れなどの自然災害が起きかねない」と危機感を持つ。森林を守るため、もっと働きたいと二〇一四年ごろから県内外の林業を視察。県内の関係者は「林業はもうからない」と口をそろえた。それなら稼げる仕組みを自らつくろうと起業した。

戦中から戦後にかけて大量の木材が必要になり、森林は大規模な伐採によって荒れた。国は成長の早いスギなど針葉樹を植林。現在は多くの木が伐採時期を迎えたものの、放置されている。採算が合わないためだ。一立方メートル当たりのスギ中丸太の価格は一九八〇(昭和五十五)年の三万九千六百円をピークに、二〇一五年は一万二千七百円に下落。スギは県内の人工林でも七割を占めるが、花粉症の原因でもあり「厄介者」扱いされている。その価値を上げようと知恵を絞る。

ものづくりは県内のデザイナーや職人と連携。企業の事務用品や案内板、食器、おもちゃなどを作ってきた。一七年度には社員を増やし、能登ヒバの入浴剤や引き出物などの新商品を出す。「大きな目標は森林資源の循環」と語る加藤さん。「意識を少し変え、国産の木材を生活に取り入れてほしい。木の癒やしを感じてもらえたら」と願う。

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