森林率が全国で最高の高知県に日本で初めて、未利用木材を100%使って破砕から一貫処理する木質バイオマス発電所が運転を開始した。年間に7~8万トンの未利用木材を燃料に、1万1000世帯分の電力を供給することができる。森林組合と鉄道会社が石油大手の出光興産と共同事業を展開する。
[石田雅也,スマートジャパン]
高知県は面積の84%を森林が占める日本一の森林県である。森林から切り出した木材の流通・加工の拠点になる「仁井田(にいだ)木材団地」の中に、県産の未利用木材を100%使った専焼方式のバイオマス発電所が4月1日に運転を開始した(図1)。
発電事業者は「土佐グリーンパワー」で、地元の高知県森林組合連合会、とさでん交通に加えて、出光興産が出資して2013年に設立した。このバイオマス発電プロジェクトでは、森林から間伐材などを発電所に運搬することから始めて、破砕・乾燥処理を含めた一貫処理体制をとる点が特徴だ(図2)。未利用木材を100%使った一体型のバイオマス発電所は日本で初めての取り組みになる。
発電能力は6.25MW(メガワット)あって、年間の発電量は約4000万kWh(キロワット時)を想定している。一般家庭の使用量(年間3600kWh)に換算して1万1000世帯分になる。燃料の未利用木材は年間に7~8万トンを見込んでいる。木材を切り出す際に生じる端材や皮の部分も利用するが、建築廃材などは使わず、未利用木材100%を徹底する。
発電した電力は地産地消する方針だ。とさでん交通が高知市内を中心に運行する路面電車(図3)のほか、森林関連施設などに供給する。2016年4月の小売全面自由化後には、家庭向けに電力を供給することも計画している。
発電所の従業員は約20人で、伐採・運搬・破砕を加えた関連事業全体では130人分の雇用を創出する。森林に残されている未利用木材をバイオマス発電の燃料に活用して林業を活性化するのと同時に、再生可能エネルギーを地産地消しながら地域産業の振興を図り、森林県ならではの成長戦略を推進していく。