徳島県那賀郡那賀町の林業家らでつくる木沢林業研究会は那賀町小畠に、紙幣の原料となるミツマタの加工施設を設けた。研究会はミツマタがシカの食害を受けないことに着目し、植樹を積極的に進めて山林荒廃を防ぐ活動に取り組んでいる。収穫したミツマタを加工して出荷することで、山間地に暮らすお年寄りらの収入確保にもつなげる。
加工場は木造平屋の乾燥庫(床面積60平方メートル)のほか、屋外にミツマタの枝や幹を蒸す釜、電動の皮剥ぎ機などを備える。総工費は約800万円で、総務省の「地域経済循環創造事業」の交付金550万円を活用。2014年11月に着工した。
加工場では、仕事を引退した地域のお年寄りが中心となり、11月~翌年4月にミツマタの収穫や皮むきなどの作業、5~10月は植樹や山地の手入れを行う。一部の作業には手当を支給する。加工したミツマタの皮は、国立印刷局四国みつまた調達所(三好市)に紙幣用の原皮として出荷する。
研究会の亀井廣吉会長(66)=那賀町沢谷、林業=は「皮を剥ぐ作業には、最低10人くらい必要。こうした作業が、地元の人の交流の場にもなれば」と話している。
研究会はシカの食害で荒れ地になった山林斜面の土砂流出を防ぐため、12年にミツマタの植樹を開始。これまでに山の尾根など約25ヘクタールに植え、13年からは国立印刷局に納入している。
植樹後3年ほどたったミツマタは幹ごと伐採しても、株から新しい幹が育つため、今後は順次、収穫量が増えていく見込み。
【写真説明】完成したミツマタ加工場。乾燥庫を備え、蒸して皮を剥ぐ作業などを行う=那賀町小畠