カルビー、森と企業と消費者をつなぐ——EVIで始まる身近な環境貢献

2011年、カルビーのカルネコ事業部は、三菱UFJリースと共同で、「日本の森と水と空気を守る」をテーマに、EVI(Eco Value Interchange)推進協議会を立ち上げた。

EVIは、オフセット・クレジットを販売したい「森林事業者」と、クレジットを購入してCSRやカーボン・オフセットなどの環境貢献活動につなげたい「企業」、エコ活動に興味はあるがどう関わっていいのか分からない「消費者」の3者を結ぶ、クレジット流通のプラットフォームだ。

「EVIシール」を貼ると、環境貢献するカーボン・オフセット付商品になる。

at0316001その仕組みは、環境貢献に関心のある企業が、EVIが預託を受けている森林事業者から支援先を選び、EVIシールを購入することで、クレジットを購入する。企業はシールを貼った商品をカーボン・オフセット付商品として販売し、消費者はその商品を買うことで、環境への貢献が簡単にできる。また、EVIのお買いものサイト「森のめぐみのおとりよせ」で商品を購入すれば、消費者が自身で支援したい森を選ぶこともできる。

活動開始から4年目。EVIへのクレジット預託森数は68、参加企業は39社となっている。カルビーのカルネコ事業部・加藤孝一事業部長は、「現在、預託クレジットにおける都道府県カバー率は77.3%に達しています。企業や消費者がどのエリアにいても、自分の生まれ故郷や親近感のある地域の森を支援できるよう、都道府県カバー率100%を目指しています」と話す。

「環境」をキーワードにビジネスを

カルビーと言えばすぐにポテトチップスを思い浮かべるが、カルネコ事業部が担当するのはスナック販売ではなく、POPなどの販促・プロモーション事業だ。

不要なディスカウントをせず、ユーザーに喜んでもらいながら、小売、卸、メーカー、消費者がともに適切な利益を得る。価格訴求型ではなく、価値創造型プロモーションが、カルネコ事業部の基本。

そのカルネコ事業部がEVIを構築するきっかけとなったのは、2010年、菓子業界が取り組んだCFP(カーボン・フット・プリント)算定試行事業での、環境貢献型プロモーションだ。

プロモーションでは4企業、4商品でキャンペーンを実施。企画は、商品のCFPマークを応募用紙に貼り、応援する森林保護活動を選択し応募すると、マーク1枚=2円で応援する森のクレジットを購入できるというもの。森林保護を支援すると同時に、アンケートで消費者の環境意識についてもリサーチした。結果、前年の同時期に比べ2.7倍という高い販売率と、「身近な商品の購入で環境貢献ができるなら1割程度なら高くても買いたい」という消費者意識が顕在化した。

「ディスカウントせずに売れて、販売率も高いのであれば、『環境』をキーワードにビジネスが回るはずと確信しました」

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地域住民のコミュニケーションツールに

環境に貢献できる商品を買いたいと思う消費者、環境に貢献したい企業、クレジットを売りたい森林事業者、3者をつなげ環境貢献型プロモーションを広く行っていくには課題もあった。一つは、全国に散らばる森林事業者と交渉するには時間とコストがかかること。もうひとつは、クレジットが1トン単位の販売となっているため、購入費が膨らんでしまうことだ。

カルネコ事業部では、森林事業者からクレジットを預かり自由にプロモーションできる仕組みを構築。販売については実質金額で購入できるよう、カルビーが代理で買って、小分けして売る方法を提案した。

こうして、環境貢献型プラットフォームEVIが誕生。企業のプロモーションで森林支援のサイクルを身近に感じる社会をつくり、消費者の環境保護への関心を高めるきっかけづくりに成功している。

「例えば、関東圏で古本販売店を経営している企業は、鹿児島への初出店に際し、地域住民の心をつなぐ手段として、このEVIを活用しています」

この企業は、来店人数をカウントし、一人あたり1円を森林支援に使うとルールを設定。出店の際、“ご来店おひとりさま1円を鹿児島の森林支援に”と広告した。関東から出てきた企業が自分たちの地元の環境貢献に尽力している。そのことが、地元民の店に対する親近感を呼び起こすのだ。

EVIは、地域住民、消費者とのコミュニケーションを円滑にするツールとしても有効に活用できる。

環境貢献思考を全国へ

現在、60~70点の環境貢献型商品が、EVIプラットフォームから生まれている。「勉強会やイベントなどを行い、各地でカーボン・オフセット付商品を増やしていこうと、取り組んでいます」

商品の発想は様々だ。リゾート地の公共宿泊施設や公民館などで、電気代やアメニティ購入費、クリーニング代などを節約し、節約した金額をクレジット購入にあてCO2を消し込む、「グリーン&クリーン・リゾート」という企画もあり、長野県立科町が昨年8月から実施している(図2)。

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「グリーン&クリーン・リゾートを旅行先として設定し、お客様のお好みでエコ旅行をプランニングできる仕組みなども、今後考えていく予定です。旅行会社がEVIプラットフォームに加わってくれれば、森のクレジットを流通させる新たな可能性が広がると考えています」

消費者の環境貢献意識を高める仕組みとしては、一昨年10月、専用お買いものサイト「森のめぐみのおとりよせ」を立ち上げた。商品を購入すると、1%がクレジット購入にまわるサイトだ。さらに追加したければ10円から金額を選択し、クレジット購入にまわすことができるアドオンボタンがついている(図3)。

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商品を購入し、応援金額を決定すると、応援したい森をセレクトできる画面になる。さらに、「生活の中で排出するCO2を消し込もう」という投げかけがあり、クリックするとオフセットや、生活の中でCO2がどう排出されているかなどのガイドを読むことができる。そして、自分がいま購入したクレジットでどれだけのCO2をオフセットできるかが分かり、オフセットした分の証明書も手に入る。

「画面を見ながら遊び感覚でシミュレーションできる機会が増えれば、自分の排出しているCO2やどのくらいでオフセットできるのかが、肌感覚で分かるようになります。すると、節約する気持ちも自然と出てきて、エコにつながると思います」

国の施策が商品開発を後押し

2月9日、環境省は「平成27年度二酸化炭素排出抑制対策事業費等補助金(環境貢献型商品開発・販売促進支援事業)」に関わる補助事業者の募集を発表した。

環境貢献型商品開発・販売促進支援事業は、クレジットを活用した個別用品の開発や販売促進に要する経費を間接的に補助する事業で、2月9日~3月6日の期間で、同事業を行う法人を公募する。環境省では同事業に5.5億円の予算を組んでいる。

「こうした国の施策に多くの人が手をあげ、カーボン・オフセット付商品が増え、森のクレジットがより活発に動き出すことに期待しています」

今後、EVIプラットフォームによるカーボン・オフセット付商品が増えていけば、次はどう販売促進していくかが課題となる。

カルネコ事業部では、本年4月をめどに楽天、ヤフー、アマゾンの3つチャネルで通販サイト立ち上げの準備中で、全国各地の環境貢献型商品を集約して販売する出口とする計画だ。

加藤氏は「環境貢献型商品を作ったら、これは環境に良い商品ですと分かりやすくPRすることが重要」と話す。“CSRは奥ゆかしくやるべき”といった思考の企業もなかにはあるが、消費者はより分かりやすい提示を求めている。

「その商品がどう環境に良いのか、ストーリーを伝えて堂々と消費者に投げかけてほしい。消費者ときちんとコミュニケーションすることが重要です」

環境貢献プラットフォームEVIの果たす役割は、今後ますます大きくなっていく。

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3月開催「環境貢献型商品の開発・販売促進への支援事業に関する商品開発説明会」

日本の森と水と空気を守るEVI推進協議会は、2015年度 環境省のクレジットを活用した 環境貢献型商品の開発・販売促進への支援事業に関する商品開発説明会を3月下旬から、全国の エリアで開催する。

全国の企業や特定地域協議会、自治体等とも連携しながら、本当に役に立つ 環境貢献を実現する商品や地域の特産品等をカーボン・オフセット商品として開発し、 首都圏から地方へ、地方から都市部へと拡大し、環境貢献型商品の創出が提案される。

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