日本の木材の魅力を振り返る「木で、未来をつくろう2014」開催

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11月20日(木)、東京・港区にある増上寺・光摂殿において「木で、未来をつくろう2014」が開催された。会場にはさまざまな木材製品が展示され、新鮮な木の香につつまれた中でのシンポジウムとなった。

最初に登壇したのは林野庁長官・今井敏氏。今井長官は日本がノルウェー、スウェーデンに続く世界第3位の森林大国であることをまず指摘した。そのうえで「木は、伐採した後に植林すれば、また利用できる再生可能な資源」と位置づけ、木を伐採することはネガティブなことではないと主張。消費者や企業が進んで木材を活用することを促した。

著名建築家・坂茂氏のトークセッション

建築家の坂茂氏とTOKYO FM パーソナリティの高橋万里恵氏によるトークセッション

続いて、建築家の坂茂氏とTOKYO FM パーソナリティの高橋万里恵氏によるトークセッションが行われた。坂氏は被災者や難民などの仮設住宅に積極的に取り組むことで有名。また、紙管を利用した建築物を多数手がけたことでも知られている。トークセッションでは、主に坂氏が手がけた国内外の建築物を紹介。それぞれの建築時にまつわるエピソードを加えていった。宮城県・女川町多層仮設住宅の例では、坂氏の工夫により木材を多用。ほかの仮設住宅と同じ面積・予算ながら快適な空間を提供できたとした。期限が過ぎても住み続けることを希望する被災者までいたというエピソードも添えた。また、スイスの新聞社、タメディア新本社については「日本ではこれほど大規模な木造建築は法制上建てることはできない」とし、ヨーロッパにおける木造建築の先進性を訴えた。

なお、このトークセッションは、12月7日(日)、12月14日(日)の7:30~7:55にTOKYO FMでオンエアされる予定だ。

キーマンによるパネルディスカッション

トークセッションの次に、パネルディスカッションが行われた。More trees 事務局長・水谷伸吉氏を進行役に、林野庁林政部木材利用課長・吉田誠氏、NPO team Timeberize・内海彩氏、イトーキ Econifa開発推進室室長・末宗浩一氏、デザイナー・柴田文江氏が参加した。

進行役のMore trees 事務局長・水谷伸吉氏

左からNPO team Timeberize・内海彩氏、イトーキ Econifa開発推進室室長・末宗浩一氏、デザイナー・柴田文江氏、林野庁林政部木材利用課長・吉田誠氏

まず、吉田氏が日本の森林について解説した。吉田氏によると、世界全体でみると減少している森林だが、日本では森林面積は約70%にもおよび、豊かな資源としての可能性を秘めていると指摘。ただし手入れが追いつかず、樹木が密集しすぎて地面に日光が届かず不健康な状態の森林も多いという。適度に間引きすることで植生が豊富になり、豊かな生態系が作られるとした。そのためには林業を発展させることが不可欠。大型木造建築への対応や木質バイオマス発電などの事業を発展させること、各家庭においても木造家具や薪ストーブなどを導入してもらうことなどで木材の需要を高めたいとした。

内海氏は、日本であまり例のみられない5層の木造建築の計画について紹介。耐火性をいかに確保するかといった課題の克服のためや、リーマンショックによる経済事情などで立ち後れていたが、計画立案から10年の時を経てようやく竣工したことを報告した。

末宗氏はイトーキのオフィス家具についての取り組みを披露した。もともと同社はスチール製のオフィス家具が主流だったが、最近では木製オフィス家具の需要が高まってきたという。同社の京橋オフィスや三井物産本社の1Fフロアなど、木製オフィス家具を導入した事例を紹介し「木製家具が多いオフィスのほうが社員のやる気が高まる」とした。

柴田氏は、デザイナーの観点から木造製品の魅力について語った。同氏は主にプラスチック成型による商品のデザインを手がけていたが、最近では木製商品のデザインに魅力を感じているという。特に木材と木材を接着剤でつなぎ合わせた「集成材」に着目。「無垢の木材は年輪などが目立ってしまい、どうしても和のテイストを意識したデザインになりがち。だが集成材ならば洋の東西を問わないユニバーサルなデザインにしやすい」と集成材を利用した作品を紹介した。

こうして各参加者が木造製品に対する取り組みを会場に伝えたところで、シンポジウムは幕を降ろした。

※会場に展示されていた木造製品の一部。(写真)山形の木材から作られた「もくロック」。

マイナビニュース