徳島県勝浦郡上勝町の住民団体「かみかつ里山倶楽部」は、上勝で森林関連の仕事に従事してきた人たちの証言をまとめた「山で生きるということ~かみかつ山の聞き書き 2013」を出版した。戦後復興や高度経済成長を森林業から支えた技術者らの来し方を振り返る内容で、“森の戦後史”とも呼べる貴重な記録集となっている。
A5判、164ページ。登場するのは、大工や製材業者、林業関係者が宿泊した旅館主ら68~85歳の男女6人。かみかつ里山倶楽部が、町内在住者らを対象に聞き手を募り、一人語りのスタイルでまとめた。
「じる田んぼはあかん。大きょうならんわ(水はけの悪い田んぼはだめ。大きくならない、の意味)」など、上勝の方言による語りをそのまま採録。それぞれの森づくりの技術や生活ぶり、人生などをつづり、注釈や図解を付けた。
里山倶楽部は、森とともに生きてきた人たちが培った技術や経験が、過疎や高齢化によって伝承されずに消えてしまうことを懸念。貴重な証言を記録にとどめておこうと、2013年8月から9カ月かけてまとめた。
インタビュアーを務めた里山倶楽部の原田寿賀子さん(38)は「誇りを持って森の中で生きてきた人のすごさやたくましさをを感じた。上勝の地で地道に生きてきた人を知ってほしい」と話している。今夏も聞き手を募り、第2弾をまとめる予定だ。
1300円。千年の森ふれあい館(同町旭)など町内4施設で販売。問い合わせは同館<電0885(44)6681>。
【写真説明】森づくりに携わった6人に聞き取った技術や人生をつづった本=上勝町旭の千年の森ふれあい館