林業通じ「平泉」保全へ 北上進出の合板製造会社【岩手】

e14041822岩手県西磐井郡平泉町と、北上市に進出する合板製造の北上プライウッド(資本金1億円、井上篤博社長)は23日、林業を通じた世界遺産の保全を目指す「地域森林環境の保全に関する連携協定」を締結する。平泉町の金鶏(きんけい)山(98・6メートル)や束稲(たばしね)山(596メートル)などの森林環境保全や、将来の金色堂や中尊寺の大規模補修に向けた用材育成などに包括的に連携して取り組む。行政と企業が連携し、森林と世界遺産を守る取り組みとして成果が注目される。

協定では、北上プライウッド社が平泉町内で生産された木材を積極的に利用するとともに、森林の植林や下刈りなどの森林環境保全、松くい虫被害木の処理などに連携して取り組む。県が盛岡市内で23日に行う同社と北上市の立地調印式の席上で調印する。

平泉町の世界文化遺産は、国の史跡の金鶏山のほか、中尊寺や毛越寺など五つの構成資産の多くが森林の中にあり、周囲の景観と一体で形成されている。しかし近年は国産材の需要低迷で森林管理がおろそかになり荒廃が進んでいるほか、松くい虫の被害拡大も懸念されている。後世に遺産を受け継ぐには、林業と一体となった保全対策が欠かせない。

北上プライウッド社は北上市和賀町の後藤野工業団地に2月から新たな合板工場を建設しており、来年2月に操業を開始。県森林組合連合会を通じ、同町など全県から年間約10万立方メートルの県産原木を調達する。協定により、同社が同町の原木を優先的に使用することで、経済的に山林の適切な管理が可能となる。

【写真=世界遺産の構成資産の一つ金鶏山(手前)と、かつて桜が咲き誇ったと伝えられる束稲山(奥)。「争いのない仏国土」を後世に受け継ぐには、森林保全が欠かせない=17日、平泉町】

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