徳島県那賀郡那賀町の若手林業家が、交流を深め技術の向上を目指す団体「山武者」を設立した。町内では若手の林業家が増え、ワイヤを張って運搬する「架線」や林道整備といった林業技術の継承が課題となっている。メンバーはベテランを招いて講習会を開いているほか、今後、間伐材を使った製品作りやイベント企画などでアイデアを出し合い、林業振興を図る。
メンバーは町内の34人で20、30代が中心。町森林管理受託センター準備室が呼び掛け、これに応じた林業家が2013年11月に立ち上げた。
12月には「武者修行」として、町有林で林業講習会を開いた。高度な技術を持つベテランから指導を受けられる町の支援制度を利用し、森林組合や協同組合、個人経営など、さまざまな事業体から集まった8人の若手が、熟練者からスギの伐採などを学んだ。
林業歴7年の八田鉄平さん(31)=同町百合=は「若手が増えたことで師匠から技術を学べる機会が減っている。少ない人数で丁寧に教わることができた」と話す。
準備室によると、町内の林業従事者は2005年の139人から、10年は169人に増加し、現在はさらに多くなっている。増加分の多くは若手で、事業体内でも世代交代が進んでいる。
町内の林業者は増加の理由を、建設業界から林業への参入や、新規就業者の人数に応じて研修費を助成する全国森林組合連合会の「緑の雇用」事業の効果でU・Iターンする若者が増えたと見ている。
今後は技術の向上のほか、間伐材を使った製品の創作・販売や木工体験会などを開き、地元への浸透を図る方針。樫谷将志会長(34)=同町延野=は「若手の交流を活発にすることで互いに刺激し合い、林業の振興に向けた新しいアイデアを生み出したい」と話している。
【写真説明】熟練者から技術を学ぶ山武者のメンバー=那賀町丈ケ谷