カナダ南西部、大都市バンクーバーと海峡を挟んだ対岸にあるバンクーバー島。ここに毎日の都会生活で疲れた大人たちが集う、人気の宿泊施設があるという。子どもの時から森が大好きだったという60代男性によって作られた、木に吊った球体客室のホテルだ。風が吹くと部屋全体がわずかに揺れるのも人気の1つになっているそうで、自然を大いに味わおうと安らぎの時間を求める宿泊客で、1年を通じて賑わっている。
この宿泊施設は、バンクーバー島中部のクアリカムビーチにある「Free Spirit Spheres」。公式サイトなどによると、経営者のトム・チャドリーさんは「子どもの時から、他にはない“魔法”があるといつも感じていた」と話すほど、昔から森が大好きな場所だったという。その愛着が高じた彼は、1993年に木々に吊るして浮かべる小屋を初めて自分で作ってみたそうだ。
そして出来上がったのが、帆船作りの技術を応用して作ったという木製の丸い小屋。総額「10万ポンド(約1,560万円)」もの莫大なお金を注ぎこんだとあって、製作開始当時は家族から「浪費しすぎ」と陰口も叩かれていたそうだが、完成品を目にすると小屋に興味を示し、好意的になったという。それから2年後の1995年、小屋を吊るせる森がある土地を所有していなかった彼は、バンクーバー島東側にあるデンマン島に土地を持っていた友人にお願いして、初めての小屋“イブ”を木に吊るして使い始めた。
すると間もなく、多くの人から「イブに泊まりたい」との要望されるようになり、チャドリーさんは「ホテルを経営しよう」と決断し、バンクーバー島クアリカムビーチで「Free Spirit Spheres」をオープン。現在はイブに加えて、同じ木製の“エリン”、グラスファイバー製の“メロディー”の3つの部屋を用意し、毎日多くの宿泊客で賑わっている。各部屋は3本の木にロープで結ばれ、約3〜4メートルほどの高さに固定。近くの木を取り巻くように作られたらせん階段を昇り、入室できる仕組みだ。
そんな球体部屋には上や横に多くの窓も取り付けられており、森の空気を味わいながら近くの海や星空も堪能できる。利用するには16歳以上からとの制限があるが、風のせせらぎすらも体感できる部屋に泊まった客たちからは、「木々と星の海に漂っているような感じ」「今までで一番豪華なアウトドア施設だった」などの声も。大人が子どものようにはしゃげる施設として、1年中宿泊客がやってくる人気ぶりだ。
将来的に、今は外に用意してあるシャワー室なども備えた大きな小屋を「10個から15個は作りたい」と、さらなる営業拡大を見込んでいるチャドリーさん。現在61歳の彼が、これからどこまで充実させていくのかも楽しみなこの施設、カナダの大自然の素晴らしさを味わってみたい人は、一度訪れてみてはいかがだろうか。
(著:Narinari.com編集部)