全国的に相次ぐ外国資本による森林買収を背景に、水源地の森林を守ろうと福井県が四月に施行した条例で、規制対象となる森林の指定地域案が決まった。県は九日から指定案の公告・縦覧を始め、九月上旬には正式決定する方針。
条例名は「県水源涵養(かんよう)地域保全条例」。県森づくり課によると、国有林以外の森林を指す民有林は県内に二十七万三千ヘクタールあり、案ではうち43%の十一万七千ヘクタールを指定。生活、農業、工業の各用水やダムなどの上流のいずれも重要な水源地に当たる。
民有林における指定率を市町別でみると、大野市(87%)、坂井市(56%)、美浜町(48%)の順で高い。
指定案の図面約五百枚を、森づくり課や各農林総合事務所など県内八カ所に置き、九~二十三日に誰でも見られる。県のサイトにも森林の住所一覧を掲載する。水源の利用者や森林の所有者ら利害関係者は、意見書を提出できる。
林野庁の調べでは、外国資本による森林の買収は、二〇〇六~一二年に八道県で六十八件、八百一ヘクタールあった。ミネラルウオーター販売のための地下水の採りすぎや、リゾート開発による森林伐採などが懸念されている。県内では確認されていない。
ただ、世界貿易機関(WTO)の協定で外国資本の差別はできないため、県は外国資本に限定せずに水源地を守る条例を制定した。
条例では、指定地域内の土地を売買する場合は事前の届け出を義務付け、県は保全の助言を行う。開発行為や地下水の取水を規制し、必要なら立ち入り検査もする。五万円以下の過料を科す制裁措置も設けている。
土地売買などの事前届け出の義務化は十月一日に始まる。
(西尾述志)