国土の7割が森林という森林大国でありながら、外国産の材木などに押され、国内の林業衰退が続いている。こうした中、新たな森林活用法として、フランス生まれのアウトドア・レジャー施設「フォレストアドベンチャー」が各地で誕生し、人気を集めている。森での冒険を通じて、森林に親しんでもらおうという試みだ。(村島有紀)
◆自力で安全確保
フォレストアドベンチャーは自然の立ち木を利用したアスレチック。フィールドアスレチックとの大きな違いは樹上に設置した足場の高さ。高い所で地上14~15メートルにもなる。落下防止のハーネス(安全装置)を付けて自分で安全を確認し、上ったり、ジャンプしたりしながら、木から木へと移動する。ジップスライド(滑車ロープ)での移動は、まるで本物のレスキュー隊や特殊部隊の隊員のようだ。
神奈川県小田原市の「フォレストアドベンチャー・小田原」(18歳以上3500円、小学1年~17歳2500円)は平成22年4月、個人所有の「辻村山林」約70ヘクタールのうちの1ヘクタールを使ってオープン。樹齢300年のスギの大木や戦後に植林したスギ林とヒノキ、モミノキ、カヤなど原生林の趣を残す森林の間を約2時間かけ、8つのコースをめぐる。
開業のきっかけは、オーナーの辻村百樹(ももき)さん(56)が江戸時代から代々受け継いだ山林を「里山」として活用できないかと考えたこと。「材木の使い道は少ないが、山林は間伐などの手入れが必要。従来の方法では山林経営は成り立たない。森を守り、次世代に引き継ぐため、新たな活用法と収益の可能性を探していた」
年間平均約1万人が訪れ、安定的な経営が見込めることからアルバイトだったスタッフを社員にすることもできた。平均年齢20代後半の若い社員が、山林にある梅園や竹林の手入れも担い、山を案内するエコツアーなど新たなアイデアも生まれている。
「若い人が山林に興味を持ってくれたのがうれしい。今の都会の人の生活は森から離れている。木に登れば雨にぬれない、森の中は夏でも涼しいなど、少しでも森の良さを感じてもらえれば」と辻村さん。
フランス・アルタス社と共同でフォレストアドベンチャーの設計と施工、運営指導を手掛けるパシフィックネットワーク(東京都新宿区)によると、国内では平成18年に山梨県鳴沢村で第1号が誕生した。その後、山林活用に関心を持つ自治体や業者からの問い合わせが相次ぎ、年2、3カ所ずつ開業。現在は、沖縄・九州、本州で13カ所がオープンしている。
運営主体は、個人の山林所有者やNPO法人、自治体、リゾート開発業者などさまざま。今年4月にオープンした「こすげ」は、山梨県小菅(こすげ)村の直営。同県大月市と結ぶ「松姫トンネル」が来年開通することから、観光客の誘致を目指し、手つかずの自然を活用したレジャーの目玉として整備した。
同村源流振興課の木下拓郎さん(35)は「村の95%が山林という特徴を生かし、活性化を図りたかった。予想より来場者が多く出足は好調」。パシフィックネットワークの田桑正樹さん(47)は「うっそうとした森も、通り道を作るために間伐すると明るくなる。各地の森にはそれぞれに特徴を持つ。今後も、それぞれの森林と土地の特徴を生かした冒険の森を広げたい」と話していた。
◇「フォレストアドベンチャー」のURL
http://www.foret-aventure.jp/