林業再生の新たな人材を育成する神奈川県の「かながわ森林塾」が5年目を迎え、南足柄市などの山林で7月から現場実習が始まった。約19人の未経験者が伐採などの技術や知識を身に付けようと、ひた向きに汗を流している。林業経営の不振を背景に、戦後植林されたスギやヒノキの手入れが行き届かない状況が深刻化する中、担い手の裾野を少しでも広げようと模索が続く。
2009年度からスタートした森林塾に、本年度は県内外から41人が参加。6月から、基本的な知識や技術を学ぶ10日間の体験コースを行い、筆記や実技の試験に合格した20人のうち19人が今、現場実習に臨んでいる。事業費は5500万円。受講は無料で、チェーンソーなどの取り扱い方などを学べる。
現場に入って2日目の7月25日に実習が行われたのは、同県が管理する南足柄市塚原の山林。林業の一翼を担う相模原市の民間企業のスタッフからアドバイスを受け、刈り払い機や手鎌などで約5時間にわたり下草を刈った。
その1人、田中健太郎さん(35)=藤沢市=はかつて、派遣社員としてIT企業で働いていた。「システムを開発しても、次々と更新されていくため、自分が手掛けたものは数年しか残らない。けれど、林業は何十年も形として残る」と魅力を感じている。作業を体験し、「体力が持つか心配」と本音ものぞかせたが「体が慣れてくれれば」と意欲も見せる。
「国産の木材が外国産に押されていると本で読み、森を守る仕事にやりがいがあると思った」というアルバイトの吉成学さん(33)は「現場の話をいろいろ聞いて、面接に役立てたい」と積極的に吸収しようと取り組んでいる。
受講者は来年1月下旬までに80日間の研修を受ける。修了予定者は林業に携わる県内の民間会社や森林組合が集う面接会で仕事先を探す。
同県森林再生課によると、森林塾の修了者は12年度までで67人。うち42人が林業に就き、今年3月末現在で38人が仕事を続けている。「定着率はまずまず」(同課)とみている。ただ、50代の受講者が体力的な問題から就職できなかったケースもあり、気持ちや関心だけでは必ずしも従事できない厳しい仕事でもある。こうした状況も踏まえ、現場が求める人材を育てられるかどうかが今後の鍵を握る。
県の担当者は「全国的にも森林の伐採が必要な時期となり、人材確保は大きな課題。就職率を高められるように取り組みたい」と話している。