「木の駅」広がる 間伐材持ち込み地域通貨と交換

2013年3月18日

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林業で生計を立てない山主でも気軽なお小遣い感覚で間伐に取り組めるプロジェクト「木の駅」が全国各地で急速に広がっている。山主らの合言葉は「軽トラ(軽トラック)とチェーンソーで晩酌を」。間伐材を持ち込むと地域通貨が支払われ、それを地域の商店で使う。急増する理由は何か、現場を訪ねた。 (吉田瑠里)

 「旭・木の駅プロジェクト」は愛知県豊田市旭地区で今冬、四期目を迎えた。約四十人の山主が間伐材の出荷に取り組んでいる。

 自分の山のスギ林でチェーンソーを手にする実行委員会委員長の高山治朗さん(60)。同県岡崎市で教員などを務め、四十三年ぶりに生まれ故郷に移り住んだ。山の風景は、子どものころの記憶とは変わり、うっそうと木や竹が茂っていた。「おやじは百姓で林業もやってたけど、ここ十五年ほど高齢で間伐できなかった。周りの家の人もそう。身の回りくらい、人の手が入った森にしたいと思った」

 木の駅は二〇〇九年、岐阜県恵那市で始まった。その後三年間で鳥取、長野県など全国約三十カ所に増えた。規格に合わない、量が集まらないなどの理由で間伐しても山に捨てられていた木材を、実行委員会などが相場より少し高い価格の地域通貨で買い取る。

 各地で木の駅のアドバイザーを務めるNPO法人「地域再生機構」(岐阜市)の丹羽健司さん(59)は「規格をあまり気にせず農産物を道の駅に出荷するように、気軽に山から木を出荷できるようにして、素人山主に森へ目を向けてほしかった」と話す。一つの木の駅は一中学校区が原則で、地域通貨は大型スーパーではなく地域の商店で使う。

 旭の木の駅では、間伐材に一トン当たり六千円の地域通貨「モリ券」を支払う。チップ製造会社「名古屋港木材倉庫」が旭地区の木材集積場を回って回収し三千円で買い取る。残りの三千円は実行委員会の一員である、豊田市などが負担する。多くは山主自らが出荷するが、不在山主が木を切って出荷してもらう場合、山主は無償が原則だ。

 「たいした金にはならないけど、冬に子どもたちが帰ってきて、山の手入れをしている親の姿を見ると、なんか感じると思う」と高山さん。「集まった時に年金や病気の話じゃなく、安全な木の切り方の情報交換をするようになった」という山主の声も。地元の食料品店の男性(45)は「最初は作業着姿で酒を買っていったけど、最近は奥さんが米や調味料をモリ券で買うように。普段来ない人が来てくれる」と歓迎する。月一回の実行委員会は山主、商工会、行政にIターンの若者も加わって話し合う。

 「過疎で自分の住む所に自信がなくなっていた。木の駅が始まって、自分が動いて環境が良くなり、自信が付いた。過疎だけど、もう一回元気になろう、その方が楽しい、と思える」と山主の一人。椙山女学園大の谷口功准教授(社会学)は「木の駅によって、自治が生まれる可能性がある」と評価する。

 事務局の費用は寄付頼み。苦しい台所事情を知った三十代の女性三人が「木の駅女子部」を結成、寄付の呼び掛けを行った。親子連れなどが間伐してモリ券を手にする体験会も催し、プロジェクトをもり立てている。

◆販路の拡大など討議

 三月上旬、旭地区で「木の駅サミット」が開かれ、秋田から島根まで七県十五の木の駅の運営者らが参加した。昨年は恵那市で開かれ、二回目。

 販路の拡大、不在地主と出荷者をどうつなげるか、行政との関係など課題を話し合った。地元の温泉が、まきボイラーを導入し、まきを持参すれば温泉に入れる仕組みもあった。

 地域再生機構の森大顕理事(30)は、一~二月に視察したまきボイラーの先進地であるドイツ、スイスなど欧州について報告した。ドイツのレッテンバッハ村では木の駅のように、自分で切った木材を持ち込むと地域通貨が支払われる仕組みを始め、自分で生産した乳製品など酪農にも広がり、人口増加の起爆剤になったと紹介。一方で「まきなど、燃やす利用法だけではなく、より付加価値の高い利用法も考えましょう」と呼び掛けた。

中日新聞


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