県の北部森林整備事業 造林効果、一部根拠なし

2012年11月10日

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本島北部の県有林における森林整備事業で、植林などを行う造林事業の費用対効果の算出根拠である基礎資料の一部に、出典根拠の不明な資料があることが9日までに分かった。県森林緑地課は再計算後の数値自体は適正と主張。一方、林道事業での基礎資料の一部不存在は林道の公金差し止めなどを県知事に求める訴訟で明らかになっており、原告側は「森林整備事業全体で基礎資料の一部がなく、事業そのものに費用対効果がないことは明らかだ」として中止を求めている。(伊集竜太郎)

 森林整備事業は、植林などの造林と林道整備の両事業がある。造林が主目的で、林道は造林のための管理道として整備している。

 同課によると、出典根拠が不明だと判明したのは、造林事業で流出土砂量を求める基となるデータなど。このほか年間平均降雨量の基礎資料が確認できなかった部分や、基礎資料のない林道と同じ数値を使っていたものもあった。

 費用対効果は訴訟の大きな争点となっている。県は林野庁への補助金申請の際に、同効果の数値は基準の1・0を超え、適正だと主張。一方、原告側は県の算出根拠が不明だとして信用性を否定している。

 造林の基礎資料の問題について、同課は林道の基礎資料問題発覚時の2009年から内部で実施した再検証で判明したと説明。その後、林野庁と調整して再計算した数値自体は適正との認識を示した。林道問題後、議会でも林道に対する指摘だけだったため、造林の基礎資料の問題を明らかにしていなかったという。

 県は県有林について、県公共事業評価監視委員会の休止妥当との答申結果なども踏まえ、09年度から林道工事を休止。造林事業も裸地での植林などにとどまり、伐採は見合わせている。現在、環境に配慮した森林整備事業全体の見直しを進めているという。

 一方、国頭村有林では現在、伐採事業が進められている。

 訴訟の原告側代理人、市川守弘弁護士は「貴重なやんばるの森を破壊し、経済効果もない事業は中止すべきだ」と批判した。

沖縄タイムス


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