薄暗く湿気の多い山林に、長さ約九十センチの原木が縦横に並ぶ。東京電力福島第一原発から百キロ以上離れた栃木県鹿沼市。無農薬にこだわり、原木シイタケ作りを四十年以上も続ける農家岩本文雄さん(71)は、広大な山林を見渡した。
一万二、三千本の原木から、春と秋に毎年計八トンのシイタケを収穫してきた。しかし、鹿沼市産の原木生シイタケから国の基準値を超える放射性セシウムが検出され、四月に出荷停止に。岩本さんは、今年は原木に菌を植えるのもやめた。「今の原木は汚染されて、恐らくもう使えない」。東電から賠償金は出るが、生業を封じられた悔しさが募る。
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