古里の森林 官民で守れ 「秩父の木材を使おう」

2011.12.18

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 秩父産木材を積極的に使う動きが、地元の官民で高まっている。地元の木材は輸
送コストを節約でき、古里の森林の荒廃防止に役立つ。秩父市は六月に策定した市
公共施設の木材利用促進方針で、「原則として秩父地域産木材を使う」と明記。地
元の工務店は十一月にモデルハウス「秩父杉の家」を開き、見学者でにぎわってい
る。 (五十住和樹)

 同市の方針は、公共建築物の木材利用促進法や県の指針を受け、県内ではときが
わ町に次いで決めた。方針では秩父地域産木材(秩父材)を、学校や福祉施設、公
営住宅や庁舎などの公共建築物や土木工事などで使うと記述。机やいす、文具、遊
具などでの活用も明記している。

 老朽化し、耐震化も兼ねて建て直す同市立尾田蒔小学校校舎(鉄筋コンクリート
三階建て、延べ約四千六百平方メートル)は、外壁や手すりなど校舎外部に約四百
平方メートル、教室や廊下の壁など校舎内部に約千百四十平方メートルの秩父産の
スギを使う。使用量は約四十四立方メートル。ロッカーや掃除道具入れは秩父産ヒ
ノキ。総事業費約十一億円、完成予定は二〇一三年三月で、担当者は「地元の木材
に目を向けてほしい」と教育効果を狙う。

 モデルハウスを造ったのは、同市熊木町の丸山工務店。子ども二人の四人家族を
想定した木造二階建て、2LDKに約十畳の「ワークスペース」がある。広瀬正美
社長(49)は、化学物質によるシックハウス症候群の防止や断熱効果を強
調。「木材は湿気を吸ったり吐いたり“呼吸”している。空気の質が違う。インフル
エンザ対策にもなる」と話す。

 木の香りに包まれた室内の床や壁、階段など秩父産スギの使用量は約十六立方
メートルで、使用木材の約八割を占める。風呂の床や壁も秩父材で、家を維持する
過程でも秩父材を使おうと「腐ったら取り換える」発想という。家屋の価格は千五
百万円程度。

 モデルハウスにはさらに、屋上緑化や太陽光発電パネル、庭に水をまく雨水タン
クなども設置。会議場所として無料で貸し出し、秩父材をアピールする考え。広瀬
社長は「国産材はコストが高いと言われ、秩父材の家はまだ少ない。地元の森林は
間伐だけでは維持できず、住宅建設で積極的に使われるようになれば」と話してい
る。

 <秩父材> 秩父市や小鹿野、皆野、長瀞、横瀬の4町の山林で切り出した木材
を指す。さいたま県産木材認証センター(さいたま市)は2002年、県産材の認
証制度を創設。森林組合や材木店、製材店などが「さいたま県産木材販売伝票」を
出して認証している。木を切り出す森林組合などが発行する伝票の備考欄には「秩
父・大滝」などと産地が記入されている。木材の県内ブランドでは、江戸時代から
続く、旧名栗村を含む飯能市など産出の「西川材」が有名。

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