台風12号と水害 山の「生態力」を見直そう

2011.9.6
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四国山地と中国山地を乗り越えて日本海に抜けた台風12号は、近畿や東海地方などの各地に大雨をもたらした。

 紀伊半島では奈良県南部で降り始めからの雨量が数日のうちに1800ミリを超えた。こうした記録的豪雨によって多数の犠牲者が出ている。

 政府は4日になって非常災害対策本部を設置した。もう少し早く対応できなかったのか。野田佳彦新政権にとって、東日本大震災に追い打ちをかける大規模自然災害の発生だけに、対応に全力を挙げてもらいたい。

 山が崩れ、川があふれて人家を破壊し、市街や田畑が泥水に漬かった。森林や土壌の保水力を上回る雨量となったためだ。

 被災地には大量の丸太が散乱していた。山の荒廃を思わせる光景だ。林業には間伐が不可欠だが、倒した木を山中に放置する「切り捨て間伐」の増加が問題になっている。病害虫の温床になる上に、大雨で山肌を下る水や川の流れをせき止めて、被害を拡大させる一因となり得るからだ。

 台風は海面に立ち上る水蒸気を燃料とする大気の巨大なエンジンだ。地球温暖化が進むと発生個数は増えずに、個々が大型化するという予測がある。近年の台風は、そうした傾向を示している。

 8月末には米国東海岸を大型ハリケーン「アイリーン」が襲い、ニューヨーク市などに豪雨被害をもたらした。熱帯低気圧の大型化は、世界的な傾向だ。

 日本は大陸の国々に比べて地形が急峻(きゅうしゅん)で、川の長さも短い。降雨は梅雨と台風時に集中するので水害を受けやすい宿命にある。異常気象が多発する当今において、民主党が否定的なダム建設も治水や電力確保の観点から再考されるべきではないか。

 気象庁では平成21年から台風の進路予想を、それまでの3日先から5日先までに延長して防災力の向上に努めているが、台風12号は異例の低速移動で大雨を降らせ続けた。台風の運動エネルギーは強大だ。マグニチュード8クラスの地震の10~100倍の値に達するとされている。

 大型台風に代表される気象災害への備えには、山林などの生態系が持つ潜在力を再生させる工夫も必要だ。今年は「国際森林年」でもある。防災用ハザードマップの整備や適切な避難行動と合わせて被害の軽減に取り組みたい。

MSN産経ニュース


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