2011/7/4
山口県の竹林面積は全国で3位というが、決して自慢の種ではないらしい。放置された竹やぶが目立つからだ。
間伐などの手入れをしないと竹は外へ、外へと広がる。それも土の肥えた田んぼや畑、水源地へと地下茎を伸ばしていく。
竹は根が浅く、地滑りの恐れも指摘される。また里の田畑を荒らすイノシシにとって竹やぶは身を隠す格好の場となる。
厄介ものを何とか資源に変えられないか―。そんな発想から、周防大島町では住民が竹林の手入れに動きだしている。
山裾や尾根など島のあちこちで薄緑の竹林が揺れる。その多くはかつての段々畑や棚田。石垣を築き、営々と守ってきた「遺産」が今は、やぶの暗がりに眠る。
「かつての景色を取り戻したい」。古里の変貌にがくぜんとしたUターン者が中心となって2003年、NPO法人「周防大島ふるさとづくりのん太の会」が発足した。約20人の会員が月に2、3回、竹の伐採に汗を流す。
のん太の会に刺激を受けて動きだしたのが、大島大橋近くの住民グループ「美しい三蒲(みがま)を作る会」。海の眺めをさえぎる竹やぶを切り倒し、観光客も憩える公園造りに精を出している。
二つのグループは連携し、お荷物だった竹の資源化にも乗り出した。竹やぶをタケノコの生産林に変えようというのだ。
県内で数少ない水煮たけのこの加工場が島内にある。08年に表面化した中国製ギョーザ中毒事件で国産品への追い風も吹いていた。
農家と生産グループを結成。出荷量は順調に伸び、3年目の昨年は50トン近くに。この春こそ不作に見舞われたが、県内の学校給食に必要なタケノコ約70トンを島内産で賄う目標も実現できそうだ。
もう一つのNPO法人「ふるさと里山救援隊」も農村景観を再生する観点から竹林手入れに加わっている。地元の漁協と組み、切り出した竹を魚礁として使う試みを始めている。
農家の高齢化などによる里山の荒廃で県内の竹林は約1万2千ヘクタールに増えた。森林全体の3%ほどだが、その繁殖力は見過ごせない。森林づくり県民税を財源に県は伐採を進めるが、その事業費だけで毎年、平均9千万円もかかる。
周防大島の高齢化率は50%近い。この島で竹の勢いを抑え込むことができれば、住民主導による解決モデルともなろう。
目指すべき方向性の一つは、手間をかけてさらに恵みをもたらす竹林に変えることだ。客土をし、肥料をまいて丹精した竹林からは冬場でもタケノコが取れる。「早掘り」として珍重され、高値で取引される。そこまでいけば雇用の場としても期待できそうだ。
もう一つは観光資源化。九州の産地は竹林オーナー制など都市との交流に取り組む。折しも周防大島町は体験型修学旅行の誘致に力を入れている。タケノコ掘りや竹を切る作業を通して里山の環境を学ぶプログラム作りも考えたい。
中国新聞【写真説明】住民の手入れでタケノコが取れ始めた竹林
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