大型捕食魚の減少で小魚が急増

2011/02/28

海には大小さまざまな魚がいるが、どうも様子がおかしくなっているらしい。大型魚と小型魚のバランスが大きく崩れ始めているという。
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 新たなモデルを作成したところ、タラやマグロといった捕食性の大型魚が過去1世紀で3分の2も減った一方、被食魚であるイワシやカタクチイワシなどの小型魚は2倍以上に増えているという結果が示された。

 大型魚の乱獲が小型魚の爆発的な増加を招いたのだ。カナダ、バンクーバーのブリティッシュ・コロンビア大学で水産学を専門とするビリー・クリスチャンセン氏は、「ネコがいないとネズミがのさばる」とたとえる。

 小さな魚の急増は漁業にとってプラスに思えるかもしれないが、「人間が利用できるのは一部の種にすぎない」とクリスチャンセン氏は指摘する。「漁師が見向きもしない小さな種が多い。せいぜい養殖魚の飼料か魚油に加工するくらいが関の山だ」。

 クリスチャンセン氏らは世界中の海洋生態系モデルを200個以上分析し、1880~2007年の魚の数を推定した。すると、捕食魚の減少はその54%が過去40年間に起きていることがわかった。

「北大西洋のタラが典型的な例だ」と同氏は話す。「数百年にわたり、1シーズン20万~30万トンという持続可能な漁が続けられてきたが、持続不可能な70万トンまで一気に増加した。乱獲をやめてから20年になるが、いまだに回復していない」。

 クリスチャンセン氏によると、大型魚が3分の2減少した現状こそ、最大持続生産量を維持できるという主張もあり得るという。「確かに、そうも言える。しかし、われわれの推定は実態より控えめだと思っている。個体数の減少が止まった兆候もない」。

 さらに、小型魚の急増は大型魚の減少で生じた自然の不均衡を増幅させる恐れがある。「捕食魚が大幅に減少した生態系は不安定になる傾向がある」とクリスチャンセン氏は指摘する。「捕食魚なしでは、病気や弱い個体が排除されない。陸地の生態系を見ると、同様の状況では種の激減が多発する」。

 国連環境計画(UNEP)の海洋沿岸部門でコーディネーターを務めるジャクリーン・アルダー氏によると、こうしたモデルで最も重要なのは、地球温暖化が魚に及ぼす影響を理解することだという。

「気候変動の単純なモデルでは、魚は水温が低い方へと北上または南下することになっている。この変化によって捕食魚と被食魚の関係がどのように変わるかはわかっていない」とアルダー氏は説明する。「また、温暖化によって、一部の種は汚染の被害が増える。そして最終的には、食物連鎖の上位にいるわれわれにまで影響が及ぶ可能性がある」。

 この研究結果は2月18日、ワシントンD.C.で開催されていたアメリカ科学振興協会(AAAS)の年次会合で発表された。

Photograph by Paul Nicklen

ナショナルジオグラフィック


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