2011年4月13日
中国の低炭素社会づくりは成功するか――。地球温暖化防止を目指す世界が最も注目しているポイントのひとつである。
この3月末に大連理工大学、中国社会科学院、清華大学などで講演会やセミナーを開催することができ、気候変動対策の今後の展望に関して議論する機会を得た。中国では昨年、「低炭素(low carbon)」が流行語の1つとされたほどで、低炭素化への関心は急速に高まっている。確かに、今回いずれの機会においても多くの質問が出され、活発な討論がなされた。
中国の地域別CO2排出研究
中国が低炭素社会づくりに積極的になってきたのは承知していたが、今回の討論で特徴的だったのは、中国全土での一律の取り組みという発想より、地域の実情に合った取り組みを重視する考え方であった。
例えば、中国では低炭素モデル都市・地域として、広東、遼寧、湖北、陝西、雲南という5つの省と天津、重慶、深せん、厦門、杭州、南昌、貴�、保定の8都市を選定している。だが、広東省と雲南省とではまったく経済発展のレベルが違う。むしろ意識的にさまざまな地域を選んだという側面があるのだろう。
温室効果ガスの排出削減は、気候変動枠組み条約に盛られている「共通だが、差異ある責任」の考え方で取り組むことが肝要である。国際的にはすべての国に共通の責任があるが、負うべき責任の程度は国の事情で異なるわけである。
同様に1つの国の中でも、すべての地域が取り組むべき共通課題ではあるが、それぞれの地域が実情に合った取り組み方をすべきである。農業中心の開発途上地域と、オフィスビルが林立する大都市、鉄鋼やセメントなどの産業が集積している地域とでは、取り組みは当然違ってこざるを得ない。地域の特徴を明確にとらえるのは、地域ごとの削減ポテンシャルを把握するにも、的確な低炭素化政策を遂行するうえでも欠かせない。
このような感想を得て帰国してきたところに、大変参考になる論文が送られてきた。張宏武「中国の低炭素経済への転換に関する研究―地域別CO2排出を中心に―」(日本貿易振興機構アジア経済研究所V. R. F. Series, No. 466)である。
表題が示す通り、中国の省別・部門別CO2排出構造の特徴を明らかにし、その背後にある影響要因を分析している。しかも、中国の省別、部門別のCO2排出量に関する独自のデータベース(1995~2007年)に基づいている点で貴重である。以下、張宏武論文を紹介しつつ、中国における地域からの低炭素社会づくりについて考えてみたい。
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