2011年04月04日
過去50年間で半減した世界のマングローブ林が、温暖化防止に重要な役割を果たしているとの報告書が3日、英科学誌「ネイチャージオサイエンス(Nature Geoscience)」に掲載された。マングローブ林の温暖化への影響を調べた報告書はこれが初めて。
米農務省森林局米ハワイ州ヒロ(Hilo)事務所のダニエル・ドナト(Daniel Donato)氏らによる国際研究チームは、インド洋・太平洋地域の25のマングローブ林に含まれる炭素量を調査。その結果、マングローブ林の荒廃によって増加した二酸化炭素(CO2)排出量は、世界の森林伐採による増加量の10%に上ることが分かったという。
これは、化石燃料の燃焼に次ぐ規模のCO2発生源だ。マングローブ林の減少は、大気中のCO2吸収量が減少するというだけでなく、数千年にわたってマングローブの浅瀬に堆積されてきたCO2が放出されることをも意味している。
ドナト氏らによると、マングローブ林は熱帯林と同様に大気中のCO2を吸収している。特に、水面下でのCO2吸収量は、地上の同面積と比較して5倍に上り、非常に効果的だという。
研究チームは、「マングローブ林は熱帯林の中でも炭素含有量が最も多い森林だ」「熱帯の湿地帯が気候変動に及ぼす影響について、マングローブ林の効果を含めるべきだ」などと論じている。
■マングローブ林の恩恵
ねじれた根が露出するマングローブの林は、世界100か国の水辺で見かけることができ、付近に暮らす人びとに多くの恩恵をもたらしてきた。マングローブ林の形成する汽水域は、多種多様な魚やエビの生息環境となり、漁業が栄えてきた。
マングローブ林による生態系の恩恵としては他にも、ハリケーンやサイクロンなどから住民を守る役割もある。たとえば、ミャンマーのマングローブ林は木材調達やエビ養殖場建設のために半分が失われたが、もし残っていれば、2008年にミャンマー南部を襲って死者13万8000人を出したサイクロン「ナルギス(Nargis)」による被害も、もっと軽くて済んだにちがいないと専門家は指摘している。(c)AFP
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