林経協が総会 森林・林業再生へ流通・需要拡大部会設置

2011/05/12

全国の林業経営者などで組織される社団法人・日本林業経営者協会(略称:林経協、会長:速水亨・速水林業社長)の第51回通常総会が5月11日行われ、平成22年度事業報告及び収支決算、平成23年度事業計画及び収支予算、一般社団法人への移行、東日本大震災への林業の取り組み、流通・需要拡大部会の設置などが議決、決議された。役員は全員が再選された。

 林経協は昭和16年、国による森林の強制伐採が実施されたとき、三重県、和歌山県、奈良県、大阪府などを中心とする全国の林業経営者の有志が中央林業懇話会を創設し、健全な林業経営の維持発展のための運動を始めたのが母体で、昭和37年、同懇話会を母体として社団法人化された。会員は304名。社団法人としての歴史は不動産協会と同じだ。

記者はこれまで林経協の存在すら知らなかった。今年が「国際森林年」であることから、取材を進めるうちに存在を知り、総会取材をお願いしたところ、快く承諾していただいた。取材の目的は、平成21年12月に農水省が「森林・林業再生プラン」を公表し、その後、森林法の改正などを受けて業界が「森林再生」へどのような取り組みを行うのか、また、今回の震災に対して業界がどのような取り組みを行うかを知るためだった。

 さらに、これは個人的なことだが、記者の出身県である三重県には「山林王」と呼ばれる「諸戸財閥(林業)」が桑名市にあるが、その諸戸財閥の山を管理するのが速水林業であることを知り、関係者から話を聞こうと思ったからだ。

◇     ◆     ◇

 目的は達せられた。森林再生への取り組みは、「流通・需要拡大部会」を設置したことからも、同協会の強い意志が表れている。王子製紙、日本製紙、三井物産、住友林業などのわが国を代表する「山持ち企業」を巻き込んだ活動になるようだ。

 森林再生が、震災復興へもつながっていることを同協会は宣言した。決議文は「東北、北関東の豊富な森林資源が林業を活発にすることで、林業再生のモデルとするとともに、林業や木材産業を通じた地元雇用の確保など、様々な形で復興のシンボルになるような産業となってほしい」と結んでいる。

 総会で挨拶した速水会長も「震災で大きな被害を受けたが、森林は脈々と息づいている。森林の果たす役割は大きい」と述べた。

◇     ◆     ◇

 総会出席者や役員には、いかにも「山持ち」企業の社団法人だと思わせる「叉左エ門」「甚兵衛」「「吉右衛門」などの名前の人が見られた。歴史は不動産協会と同じだが、メンバーは全然異なっていた。伊勢神宮の「神宮司廳営林部長神宮技監」の肩書きを持つ金田憲明氏も出席していた。

 普通の社団法人ではめったにないと思われる議案を否決することも簡単に行われた。議案では、一般社団法人への移行に伴う同協会の名称の変更として「日本林業経営協会」が提案された。「日本森林経営協会」「日本林業経営協会」「日本森林・林業経営協会」などいくつかの案が検討され、役員会で採決の結果、採決されたものだ。「者」を削除したのは、「『者』が入っていると〝山持ち〟の組織と思われる。誰でも入れる、ウイング(翼)を広げるためにも『者』を取った」と、同協会専務理事・絹川明氏が提案理由を説明した。

 ところが、総会では「『者』にはわれわれの『志』がこめられている」「森林を加えるべき」などの異論がとなえられた。普通なら、それでも執行部が押し切るところだが、議長役を務めた速水会長は「採決」を選択。挙手の結果、「名前を変えない」が多数となり、名称変更はあっさり否決された。

 総会後の懇親会で、絹川専務理事は「あれほど論議した結果なのに残念。『森林協会』として提案し、『林業協会』に決まるよう落しどころを考えるべきだった」と挨拶し、会場を笑わせた。速水会長も「しょうがない。私は、みんなが決めたことを粛々とやるだけ」と笑い飛ばした。

 実におおらかな団体だ。しかし、一方ではきめ細かなやり取りもあった。前述の金田氏が、議案の表現や文言について、「・(中黒)は、(句点)がいい。『林産物生産機能』は『林産物の生産機能』と『の』を入れたほうがいい」などと発言したのに対し、速水会長は「さすが伊勢神宮。森林と同じ、文章は美しくなければならない」と文章の訂正を満場一致で決めた。

◇     ◆     ◇

 森林は、わがくに国土の67%を占めるが、木材の生産高は2,000億円しかないという。中堅デベロッパー 1 社の年間売上高ぐらいだ。

 同協会の会員数もピーク時の昭和41年の1,029名から平成22年度は370名に減っている。林業業界の厳しい現状を浮き彫りにしている。山林そのものが減少しているわけではないので、それだけ集約化も進んでいるということだろうが、林業は農業とも漁業とも、そしてわが国の全産業ともつながっている。いわば「命の源泉」だ。

 「都市の再生」は「地方の再生」「森林の再生」と同レベルで取り組むことが必要ではないか。

記者はこれまで林経協の存在すら知らなかった。今年が「国際森林年」であることから、取材を進めるうちに存在を知り、総会取材をお願いしたところ、快く承諾していただいた。取材の目的は、平成21年12月に農水省が「森林・林業再生プラン」を公表し、その後、森林法の改正などを受けて業界が「森林再生」へどのような取り組みを行うのか、また、今回の震災に対して業界がどのような取り組みを行うかを知るためだった。

 さらに、これは個人的なことだが、記者の出身県である三重県には「山林王」と呼ばれる「諸戸財閥(林業)」が桑名市にあるが、その諸戸財閥の山を管理するのが速水林業であることを知り、関係者から話を聞こうと思ったからだ。

◇     ◆     ◇

 目的は達せられた。森林再生への取り組みは、「流通・需要拡大部会」を設置したことからも、同協会の強い意志が表れている。王子製紙、日本製紙、三井物産、住友林業などのわが国を代表する「山持ち企業」を巻き込んだ活動になるようだ。

 森林再生が、震災復興へもつながっていることを同協会は宣言した。決議文は「東北、北関東の豊富な森林資源が林業を活発にすることで、林業再生のモデルとするとともに、林業や木材産業を通じた地元雇用の確保など、様々な形で復興のシンボルになるような産業となってほしい」と結んでいる。

 総会で挨拶した速水会長も「震災で大きな被害を受けたが、森林は脈々と息づいている。森林の果たす役割は大きい」と述べた。

◇     ◆     ◇

 総会出席者や役員には、いかにも「山持ち」企業の社団法人だと思わせる「叉左エ門」「甚兵衛」「「吉右衛門」などの名前の人が見られた。歴史は不動産協会と同じだが、メンバーは全然異なっていた。伊勢神宮の「神宮司廳営林部長神宮技監」の肩書きを持つ金田憲明氏も出席していた。

 普通の社団法人ではめったにないと思われる議案を否決することも簡単に行われた。議案では、一般社団法人への移行に伴う同協会の名称の変更として「日本林業経営協会」が提案された。「日本森林経営協会」「日本林業経営協会」「日本森林・林業経営協会」などいくつかの案が検討され、役員会で採決の結果、採決されたものだ。「者」を削除したのは、「『者』が入っていると〝山持ち〟の組織と思われる。誰でも入れる、ウイング(翼)を広げるためにも『者』を取った」と、同協会専務理事・絹川明氏が提案理由を説明した。

 ところが、総会では「『者』にはわれわれの『志』がこめられている」「森林を加えるべき」などの異論がとなえられた。普通なら、それでも執行部が押し切るところだが、議長役を務めた速水会長は「採決」を選択。挙手の結果、「名前を変えない」が多数となり、名称変更はあっさり否決された。

 総会後の懇親会で、絹川専務理事は「あれほど論議した結果なのに残念。『森林協会』として提案し、『林業協会』に決まるよう落しどころを考えるべきだった」と挨拶し、会場を笑わせた。速水会長も「しょうがない。私は、みんなが決めたことを粛々とやるだけ」と笑い飛ばした。

 実におおらかな団体だ。しかし、一方ではきめ細かなやり取りもあった。前述の金田氏が、議案の表現や文言について、「・(中黒)は、(句点)がいい。『林産物生産機能』は『林産物の生産機能』と『の』を入れたほうがいい」などと発言したのに対し、速水会長は「さすが伊勢神宮。森林と同じ、文章は美しくなければならない」と文章の訂正を満場一致で決めた。

◇     ◆     ◇

 森林は、わがくに国土の67%を占めるが、木材の生産高は2,000億円しかないという。中堅デベロッパー 1 社の年間売上高ぐらいだ。

 同協会の会員数もピーク時の昭和41年の1,029名から平成22年度は370名に減っている。林業業界の厳しい現状を浮き彫りにしている。山林そのものが減少しているわけではないので、それだけ集約化も進んでいるということだろうが、林業は農業とも漁業とも、そしてわが国の全産業ともつながっている。いわば「命の源泉」だ。

 「都市の再生」は「地方の再生」「森林の再生」と同レベルで取り組むことが必要ではないか。

[2011/5/12 提供:RBAタイムズWeb版]


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