生物多様性:ソバ結実率に貢献、森林総合研究所が発表 /茨城

森林や草地が豊かなほど、花粉を媒介する昆虫が多くなり、中山間地で栽培されるソバの実が付く割合(結実率)が高いことを、森林総合研究所(つくば市)などの研究班が16日発表した。生物多様性を支える豊かな森林が、農産物の生産にも貢献していることが分かった。欧州の生態学専門誌の電子版に掲載された。

 ソバの実がなるには、花粉を媒介する昆虫が不可欠だ。森林総研は、「常陸秋そば」の種ソバを生産する常陸太田市の農家13戸の協力で、07年度からソバ畑で調査を始めた。

 07~08年に15~17カ所の畑で調査したところ、ニホンミツバチをはじめ、アリ、ハナアブなど約70種の昆虫が花粉を媒介していた。行動範囲が広いニホンミツバチとそれ以外の昆虫を区別して分析。ソバ畑の半径3キロ圏に約15平方キロの森林があるソバ畑で花粉を媒介したニホンミツバチは平均3匹だったが、20平方キロでは8匹と増えた。他の昆虫では、ソバ畑の半径100メートル以内に約1ヘクタールしか森林や草地がない場合は平均15匹だったが、2ヘクタールでは約30匹と倍増した。

 結実率をみると、ソバ畑の半径100メートル以内の森林・草地面積が1・1ヘクタール、半径3キロ圏の森林が12平方キロの場合は16%だった。これに対し、ほぼ2倍の密度の森に近接した畑では23%と高かった。

 森林総研の滝久智研究員(応用生態学)は「生物多様性が人間の暮らしに役立っていることはあまり知られていない。里山が昆虫のすみかを提供し、ソバの生産につながっている」と話している。【安味伸一】=一部地域既報
<毎日.jp(2010.11.18)>


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