林野庁が行なった「平成27年木質バイオマスエネルギー利用動向調査」の結果が発表され、2015年にエネルギーとして利用された木質バイオマスの種類の内訳と、利用の動向が判明した。この調査は木材の有効利用や安定供給、林業の振興などに役立てることを目的としたもので、今年度から開始された。
木質バイオマスとは、動植物に由来する有機物のうち、木質のものをいう。15年の利用量は、木材チップが690万絶乾トン、木質ペレットが16万トン、薪が5万トン、木粉(おが粉)が37万トンとなった(絶乾トン=Bone Dry Metric Tons。全重量中パルプ繊維が100パーセントを占める状態)。
さらに最も利用が多かった木材チップのうち、間伐材や林地の残材などに由来するものは117万絶乾トンで、およそ17パーセントに達した。かねてより林野庁が推進していた間伐材などの有効利用が、順調に進んでいることを示した形だ。製材工場や建設現場から出る廃材が90~95パーセントの高い利用率を誇っているのに比べて、これらの森林残材は、以前はほぼ未活用だった。そのため、今後もさらなる利用率の向上が期待される。
安価な外国産木材との競争に負けて国内の林業が衰退するにつれ、森林の整備によって発生する間伐材などが、森林内に放置されるようになった。林業に携わる人が激減したことによる人出不足に加えて、搬出や運搬のコストの負担が大きいためだ。このような「未利用材」は、年間約2千万立方メートル発生しているといわれている。そこで林野庁は、これらの未利用材をバイオマス燃料として利用することで、経済価値を持たせる政策を進めている。
なお、木質バイオマスの用途は発電、暖房、給湯などの熱利用が主で、意外なところでは、温浴施設の湯沸しなどにも使われている。今回の調査で確認された木質バイオマス用の発電機の数は232基となり、ボイラーは1,945基に達した。もちろん主流となっている石油燃料用の発電機やボイラーに比べれば微々たる数だが、木質バイオマスの活用は、今後も様々な分野で模索されている。
林野庁は、木質バイオマスの活用を推進して、全国の森林環境の改善をはかっている。また、灯油などの化石燃料は、購入代金が地域の外、ひいては原料である石油の輸入元である海外に流出してしまうが、木質バイオマス燃料なら国内で循環する。資源と経済の両方の循環を目指す施策は、課題は多いものの、より一層の発展が期待される。(編集担当:久保田雄城)