森林飽和 国土の変貌を考える

2013.06.11

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森と人とのかかわりを縄文時代にさかのぼって説き明かし、政治、社会、経済の変化によって森林が酷使され、国土の荒廃が長く続いてきた。現代は歴史的に見て最も森林が安定していて、大洪水災害が減少している。しかし、海岸の後退や里山の荒廃など国土環境に危機が迫っている。それは主に飽和状態にある日本の森林にその原因があると指摘する。

そのような新しい環境の中で、持続可能な社会を創造するひとつの試案として、「木造住宅を建てることは、花粉症や温暖化など私たちの身近な問題の解決のためにも、持続可能な社会を創るためにも不可欠な行動である」。また、「護る森」と「使う森」があることを明確に意識することが大切であるとしている。このような理論は、これまでの森林、林業関係の著書では見られないだけに斬新な感じを受ける。
しかも、人びとが森林から離れて行き、森林を利用しなくなったために、森林そのものが劣化荒廃を促進させ、国土の危機的な状況にあることを、自ら行った実地調査に基づいた理論だけに説得力がある。著者は、森林は木材を利用することによって活力ある健全な状態を維持できることを語りかけているのであり、林業関係者だけでなく一般の人びとにも森林と国土環境に関する理解しやすい解説書なので、林業関係者はもとより都市生活者にも是非読んでいただきたい。

農業協同組合新聞


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