外国資本による森林買収に自治体の自衛策が相次いでいる。水資源保全が目的だ。国会も超党派で水循環基本法案をまとめた。深刻化する世界的な水不足も見据えながら、速やかな成立を求めたい。
林野庁によると、外資による国内の森林買収は二〇〇六年以降に限っても、七道県六十件、七百八十五ヘクタールに上る。うち九割以上が北海道だ。日本の森林は農耕地のように地籍調査が進んでおらず、所有者が地元に住んでいない事例も目立つ。
なぜ、森林買収が増えているのか。最も件数が多いのは中国企業で、目的は資産保有、別荘用、商業施設など幅広い。明らかに森林の地下に眠る水資源獲得が目的の取引は確認されていないが、自治体の多くが「狙いは水資源」といぶかっているのが現実だ。
北海道、埼玉県は全国に先駆けて、森林売買に事前届け出を義務づける条例を定めた。北海道は市町村の提案を受けて水資源の保全地域を指定し、売り主が契約の三カ月前までに売却先を届けなければならない。だが罰則はなく、対抗措置は名前の公表だけだ。
実効性が伴わなければ森林保全は危うくなる。そんな心配から、神奈川県のように自ら森林を買ってしまう自治体も続出している。
自衛策を急ぐ自治体に対し政府の対応はいかにも遅い。今年四月施行の改正森林法で、すべての森林所有者に移転届を義務づけたばかりだ。国が保全基準を示し、自治体の森林買収などを後押しする政策を用意すべきではないか。
民主党も先行する自治体に背中を押されたのだろう。自民、公明党とともに水循環基本法案をまとめた。水を「国民共有の貴重な財産」と位置づけ、水資源行政を統括する水循環政策本部を設置して水資源を守るための規制、財政措置を講じるよう明記している。延長された今通常国会に提案し、会期内成立を目指すべきだ。
併せて世界的な水不足にも目配りしてほしい。国連推計では、現在約七十億人の世界人口はアジアやアフリカを中心に増え続け、二〇五〇年には九十億人に達する。今でも半数近くが生活に不便を感じる「水ストレス」にさらされており、さらなる水不足が避けられない。
日本は水の分野で世界最大の援助国だ。自らの水源地保全にとらわれず、浄水や海水の淡水化など、世界最高水準の技術力を生かして水ストレスを和らげる国際貢献も積極的に担うべきだ。
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