県産材420種 スプーン作り名人

2012年01月15日
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県須崎林業事務所で林業普及指導員を務める福留将史さん(44)は、
県内で育つ様々な木でスプーンを作る名人として知られる。木の文化を伝えよう
と、子どもたちと一緒に作りながら木が持つ肌触りや温かさを伝える活動も続けてき
た。
福留さんのスプーンを紹介する本も出版された。材料にした木はスギやヒノキ、
イチョウ、ネムノキなど約420種類に達した。

福留さんは香美市の山あいで生まれ育った。祖父が木を切る名人で、
家に大工らが集まり、木のことを自然に学んだ。小学生の時、山から町を眺めなが
ら「これからは森の時代。森の仕事をしたい」と思った。

 高知農業高校林業科を卒業し、県職員になった。当初は治山担当だったが、
希望して木の文化を伝える部署に異動。県森林総合センター情報交流館(香美
市)の展示内容を考え、子どもに木や森を知ってもらう活動に取り組んできた。

 スプーン作りは10年ほど前、高知市の小学校で授業をした時に
「おんちゃん、スプーン作ってや」とせがまれて始めた。間伐や剪定(せん・て
い)で出た枝などが材料で、樹齢400年の四万十ヒノキの枝を使ったこともある。
木は水に浸して割れにくくしておき、削る直前に取り出して地元の土佐打刃物の
なたで粗彫り。細部は小刀や彫刻刀で削る。サンドペーパーとムクの葉で磨き、
クルミの実で磨いて油を含ませて仕上げる。

木の曲がりや節などを読み、なたを入れる方向、割れない削り方を考える。
種類によっても色あいや浮き出る年輪の形、重さ、手触りなどが異なる。
バリバリノキ、コバンノキなど耳慣れない名の木も使う。
「雑木と呼ばれる木でもいろいろな特性と使い方がある」と伝えたいからだ。

福留さんは「スプーン作りは木の使い方が凝縮され、木の特性を見抜く勉強にな
る。子どもたちに木の温かさ、2億年前から生きる人類の先輩であることを知ってほし
い」と話す。

福留さんのスプーンを紹介する本は「木の種類」。
「高知の森の豊かさが表現されている」と地域おこしに取り組む
「NPO法人84プロジェクト」が369種類のスプーンの写真を50音順に並
べ、昨年発行した。蛇腹状にたたまれ、広げると10メートルになる。1500円(税
別)。
同プロジェクトのホームページ(http://www.kochi-84pro
ject.jp/index.html)から購入できる。(前田智)

asahi.com


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